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全国初の自治体窓口DXSaaS実装!和歌山県紀の川市の事例


はじめに


 ニュースや書籍などで目にすることも多くなってきたDX(デジタル・トランスフォーメーション)という言葉。国では令和2年(2020年)に閣議決定された「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」において、「将来の成長、競争力強化のために、新たなデジタル技術を活用して新たなビジネスモデルを創出・柔軟に改変すること」と定義しています。このDX化の波は留まることを知らず、今や官民を問わずその必要性が叫ばれています。地方自治体においてもDX化の必要性が指摘されて久しく、令和2年(2020年)には総務省が「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」を策定し、自治体業務のデジタル化に向けた動きを加速させていました。自治体業務の中でも、定型的な作業が多い窓口業務のデジタル化をすることは特に注目度が高い取り組みで、北海道北見市の「書かない窓口」の構築事業などが先駆的な取り組みとして知られています。今回は全国で初めてデジタル庁が推進している「自治体窓口DXSaaS」を活用して、書かない窓口の提供を開始した和歌山県紀の川市の事例について見ていきたいと思います。



紀の川市の概要


 紀の川市は和歌山県の北部に位置している自治体で、人口は令和5年(2023年)12月の時点で和歌山県の自治体の中で第4位となる約57,000人を有しています。平成17年(2005年)に打田町、貴志川町、粉河町、那賀町、桃山町の5つの町が合併することで誕生した自治体で、北部に和泉山脈、南部に紀伊山地を臨み、市内には市名の由来となった紀の川が流れる自然豊かな都市として知られています。これらの豊かな自然と温暖な気候を生かした野菜や果樹栽培が盛んに行われており、中でも市内の桃山町で生産されるブランド桃「あら川の桃」が有名です。


 この紀の川市では令和5年(2023年)4月に「紀の川市DX推進計画」を策定。このDX推進計画の実施計画的位置づけである「紀の川市DXアクションプラン」の中で、「窓口のデジタル化」という項目を設け、書かない窓口について「申請手続のデジタル化により、同じ情報を何度も書かなくてよい申請書作成支援サービス。市民の負担軽減、職員の業務効率化に取り組む。」と明記し、注力していく姿勢を示していました。



自治体窓口DXSaaSとは


 続いて、今回紀の川市が利用する自治体窓口DXSaaSについて見ていきたいと思います。自治体窓口DXSaaSとは、デジタル庁のが主導して整備している政府共通のクラウドサービスの利用環境「ガバメントクラウド」上に複数のベンダーが「窓口DXに資するパッケージシステム」を用意。そのシステムをサービスとして自治体に提供してもらう取り組みで、自治体が窓口DXに取り組む際のハードルを下げようという試みです。自治体側は自前でシステムを用意する必要がなく、クラウド上にあるシステムのラインナップから自分たちに合うものを選んで利用することができます。


 令和5年(2023年)5月にデジタル庁から調達仕様書が公開され、合わせて「ガバメントクラウドにおける地方公共団体への窓口DXSaaS提供業務及び運用保守業務委託」の公募が行われました。公募の結果、株式会社北見コンピューター・ビジネス、株式会社ケイズ、日本電気株式会社、株式会社BSNアイネットの4社が採択事業者として選定されており、これらの事業者が提供しているサービスからそれぞれの自治体の事情に応じたものを選ぶことができます。デジタル庁は令和5年(2023年)度には紀の川市も含めて17の地方自治体で自治体窓口DXSaaSを活用した窓口業務が開始されるとしています。



紀の川市の取り組み


 紀の川市ではこの自治体窓口DXSaaSを活用して書かない窓口の構築に向けて乗り出し、デジタル田園都市国家構想交付金からデジタル実装タイプTYPE1から56,816千円分の採択を受け、令和5年(2023年)度予算にも57,832千円を計上して準備を進めていました。


 そして、紀の川市は年が明けた令和6年(2024年)の1月16日から書かない窓口のサービス提供を開始しました。このスピードは自治体窓口DXSaaSを利用した全国の自治体では最速となっています。具体的なサービス内容を見てみると、住民票や戸籍、税証明などの各種証明書の申請や転入、転出、転居、結婚、出産などのライフイベントの際に発生する手続きについて、マイナンバーカードなどで本人確認をした後、職員が必要事項について聞き取りを実施。端末に聞き取った情報などを入力すると必要な申請書が作成され、来庁した市民は作成された申請書の内容に間違いがないかを確認して署名をするだけで希望する手続きの申請が完了できます。


 紀の川市では、令和6年(2024年)度以降も更なる住民サービスの利便性向上を図るとしており、書かない窓口のワンストップ化を推進する予定としています。また、紀の川市DXアクションプランでも、令和6年(2024年)度以降の書かない窓口の実現を通じた市民満足度の継続的な上昇を目標として掲げており、今後追加でどのような施策を講じていくのかに期待が寄せられています。



まとめ


 窓口業務のDX化は多くの自治体が進めており、紀の川市のようにデジタル田園都市国家構想交付金を活用して兵庫県西脇市静岡県伊豆の国市なども取り組みを進めています。窓口業務は大小問わず全ての自治体が共通して取り組む業務であり、自治体窓口DXSaaSのように導入する自治体側のハードルを下げるという視点は今後も自治体窓口業務のDX化を進める上で重要な視点となるのではないでしょうか。


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執筆者 グローカル編集部

地方創生コンサルティング、SaaS/レポートサービスを通して地域活性化を支援する、グローカル株式会社の編集部。地域活性化を目指す事例や自治体・地域企業/中小企業のDX化に向けた取り組み、国の交付金・補助金の活用例を調査・研究し、ジャーナルを執筆しています。

グローカルは、国内全体・海外に展開する地方発の事業をつくり、自立的・持続的に成長する地域経済づくりに貢献します。






出典:

デジタル庁HP:自治体窓口DXSaaS

デジタル庁HP:自治体窓口DXSaaS概要説明

政府CIOポータル:世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画の変更について

紀の川市HP:和歌山県・紀の川市 全国初!デジタル庁が推進する窓口DXSaaSを開始

紀の川市HP:紀の川市DXアクションプラン

紀の川市HP:紀の川市議会議事録 令和5年第1回定例会(第1日2月24日)

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