はじめに
官民を問わず働き方改革や業務効率化の波が押し寄せる昨今、注目されているのが「RPA」です。RPAとは、ロボティック・プロセス・オートメーションの略で、ソフトウェアロボットを活用して、ルーティン的な業務プロセスを自動化する技術です。地方自治体では高齢化や首都圏への労働人口の流出による働き手不足という地方特有の問題のほか、国や都道府県からの業務移管や地方創生に向けた取り組みが求められるなど年々業務が増加していく中で、このRPAは業務効率化への光として期待が高まっています。前回は福島県福島市での事例をご紹介いたしましたが、今回は広島県広島市の事例を取り上げて見ていきたいと思います。
広島市でのRPA導入
広島県の県庁所在地であり、中国地方でも随一の都市の規模を誇る広島市。その広島市では行政サービスの拡大に伴い、事務処理などの定型的な業務に多くの時間を取られてしまい、企画・立案などの業務に十分な時間や力を注ぐことが出来ていないという課題がありました。そこで白羽の矢が立ったのがRPAです。令和元年に公募型プロポーザルを経て、株式会社エネルギア・コミュニケーションズ(現:株式会社エネコム)のOCR・RPAサービス「EneRobo」を導入しました。
続いて、OCR・RPA導入後の実績を見ていきます。広島市議会令和2年(2020年)度決算特別委員会(第1分科会)での報告では、同年度の介護保険関係の8業務,小児慢性特定疾病関係の2業務,指定難病関係の2業務の計12業務においてOCR・RPAを活用しているとしています。
具体的な効果を見ていくと、従前の事務処理にかかっていた時間と比較して年間あたりにして1,126時間,割合では70%もの削減効果があったとしています。また、「同システムを導入した部署の担当職員から、定型的な業務の自動化で身体的な疲労感が減り、他の業務に集中できるようになったといった意見が挙がるなど、職員が市民対応や政策立案など職員にしかできない業務へ注力できる環境づくりにつながっている」との答弁がされており、視覚化されやすい業務時間の削減などの効果の他にも、担当職員の疲労感の軽減など目には見えない導入効果も報告されています。
また令和3年(2021年)度決算特別委員会でもOCR・RPAシステムを導入した効果が示されています。市県民税の特別徴収分の還付業務に導入したところ事務処理時間が大きく削減され、導入以前は担当職員を3人割り当てていた業務が、導入後は1人で業務遂行が可能となりました。ここで削減した人員を別な業務に割り当てることができるようになるなど、より効率的な市政運営を可能にしてくれることが明らかになっています。
まとめ
広島市でもOCR・RPAの活用で業務が大幅に効率化されたことが分かりました。現在では窓口業務をはじめとした13業務でOCR・RPAを活用しており、令和3年(2021)度以降、毎年当初予算の主要事業内で「OCR・RPAを活用した定型業務の自動化」として1500万円~2200万円程度の予算が付けられていることから、今後も活用の継続や活用できる業務の拡大を狙っていることが伺えます。
今回紹介した広島市だけでなく、OCR・RPAは今後業務効率化を図る自治体の取り組みの中心となることが予想されます。グローカル社では、自治体の情報を横断して一括検索できるツール「G-Finder」を活用した調査サービス「G-Finderレポート」を提供しています。自治体に関する調査や、自治体への提案・入札参加をご検討の方はお気軽にお問い合わせください。
執筆者 グローカル編集部
地方創生コンサルティング、SaaS/レポートサービスを通して地域活性化を支援する、グローカル株式会社の編集部。地域活性化を目指す事例や自治体・地域企業/中小企業のDX化に向けた取り組み、国の交付金・補助金の活用例を調査・研究し、ジャーナルを執筆しています。
グローカルは、国内全体・海外に展開する地方発の事業をつくり、自立的・持続的に成長する地域経済づくりに貢献します。
出典:
<広島市HP:定型業務の自動化に向けたOCR・RPAソフトウェア導入業務に係る公募型プロポーザル審査結果>
<広島市HP:令和2年度決算特別委員会(第1分科会)-10月15日-02号>
<広島市HP:令和3年度当初予算主要事業>
<広島市HP:令和4年度当初予算主要事業>
<広島市HP:令和5年度当初予算主要事業>
<株式会社エネコムHP:導入事例 広島市>
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