はじめに
近年、デジタル技術の進化が急速に進み、社会のあらゆる分野でその恩恵が享受されています。地方自治体においても、デジタル化の波は避けることができません。地方自治体におけるデジタル化は、行政の効率化、住民サービスの向上、地域活性化や地方創生の推進など、多くのメリットをもたらすことが期待されています。しかしながら、地方自治体がデジタル化を進めるには、その背後に十分なデジタル人材が必要です。デジタル技術の専門知識やスキルを持つ人材が不足していることが、地方自治体がデジタル化を進める上での最大の課題になると言えるでしょう。
これまでも、今秋に改定が行われる「人材育成基本方針策定指針」から地方自治体職員のリスキリングの必要性について取り上げてきましたが、今回は石川県金沢市のデジタル人材育成に焦点を当てて、その重要性と課題について考えてみたいと思います。
金沢市のデジタル人材育成の取り組み
金沢市では令和元年(2019年)度からRPA、AIなどの技術を活⽤し、金沢市役所庁内業務の改善を進めてきました。今後行政サービスの拡大による業務の増加や人口減少による職員数の削減が⾒込まれる中で、業務⾃体の抜本的変⾰に取り組む必要があるとの考えを背景に、デジタル人材育成にも力を入れた取り組みを始めました。金沢市の分野別計画の1つである「金沢市デジタル戦略2.0」の中でも、「全職員の情報リテラシーを高め、デジタル化の中心となるリーダーを育成し、デジタル技術の活用を全庁に広め、市役所を変革します。」と明記されており、金沢市としてデジタル人材育成に注力していく方向性が示されています。
続いて具体的な取り組みを見ていきましょう。金沢市では令和元年(2019年)度からICTやデータ活用に関する研修を開始。令和3年(2021年)度までに、のべ800人以上の職員が参加しています。さらに令和3年(2021年)度からは研修を拡大し、管理職を含むすべての⼀般事務職員約2,000⼈に対してデジタル研修を実施しました。
また金沢市の取り組みとして最も特徴的なのが、「デジタル⾏政推進リーダー」の育成です。令和3年(2021年)度から始まり、デジタル化推進の中⼼となる30代の職員20名を対象にデジタル化に関する基礎知識習得、RPAやデータ分析などの技術習得、現場課題のヒアリングや課題を解決するアプリの試作を経て、翌令和4年(2022)年度の政策提案をするという通年で行う研修です。知識の獲得だけでなく、市⺠⽬線で課題発⾒・解決ができる「サービスデザイン思考」を持った職員を育成することに主眼を置いたプログラムとなっています。今後、令和7年(2025年)度までにデジタル⾏政推進リーダーを100⼈育成し、およそ100個ある全課への配置を⽬指すとしています。一方でこの研修に意欲的な職員を募るのに苦⼼しており、受講者のデジタルリテラシーに差があることで講義内容やハンズオンの際に進捗に差がでたため、フォローアップ体制を強化する必要があることが課題となっているとしています。
まとめ
地方自治体におけるデジタル人材育成は、地域社会の発展や課題への対応に不可欠な要素です。今後リスキリングが自治体職員にも求められ、デジタル人材の育成が人事育成のトレンドとなる可能性が高くなっている中で、金沢市のように先駆的に取り組みを行っている自治体の情報は非常に価値のあるものとなっています。
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執筆者 グローカル編集部
地方創生コンサルティング、SaaS/レポートサービスを通して地域活性化を支援する、グローカル株式会社の編集部。地域活性化を目指す事例や自治体・地域企業/中小企業のDX化に向けた取り組み、国の交付金・補助金の活用例を調査・研究し、ジャーナルを執筆しています。
グローカルは、国内全体・海外に展開する地方発の事業をつくり、自立的・持続的に成長する地域経済づくりに貢献します。
出典:
<金沢市HP:金沢市デジタル戦略2.0>
<総務省HP:デジタル行政推進リーダー育成と全職員への研修も実施 【石川県金沢市】>
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