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スマートフォンアプリで窓口業務簡略化!三重県志摩市の事例

はじめに

 近年、急速にデジタルトランスフォーメーション(DX)が進み、様々な業務領域で革新が起こっています。日本の地方自治体においても、総務省が令和2年(2020年)に自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画を策定して、地方自治体にDXによる業務効率化・住民利便性の向上を求めており、喫緊の最重要課題として多くの自治体が取り組みを始めています。このDX化に向けた取り組みの中でも特に注目を集めるのが、窓口業務のDX化です。地方自治体が提供する多様な行政サービスをより効率的かつ便利に提供するために、最新のデジタルテクノロジーを窓口業務に活用する動きが目立っています。本ジャーナルでもこれまで、北海道北見市神奈川県横須賀市の事例について紹介してきました。今回は三重県志摩市の取り組みに焦点を当てていきたいと思います。


志摩市の取り組み

 志摩市は三重県の南東部に突き出た志摩半島に位置する自治体で、約45,000人の人口を抱えています。志摩市全域が「伊勢志摩国立公園」に指定されており、英虞湾や的矢湾などのリアス式海岸が作り出す雄大な景観が有名で、また志摩スペイン村が立地する観光地として知られています。平成28年(2016年)には志摩市内の賢島で、第42回先進国首脳会議、通称「伊勢志摩サミット」が開催されたことも記憶に新しいです。


 この志摩市では、効率的な行政運営を目指すための手段として行政サービスのDX化に積極的に取り組んでいます。令和3年(2021年)に策定された「第2次志摩市総合計画 後期基本計画」の中でも、「デジタル化に向けた業務プロセスの見直しやシステムの標準化に取り組み、各種手続のオンライン化やマイナンバーカードを利用したワンストップ手続、RPA等の業務自動化システムを導入するなど ICT 活用を推進し、自治体におけるDXを進めます。」と明記し、DX化を推進する姿勢を明確にしています。

 続いて、具体的な取り組みについて見ていきます。志摩市は、住⺠が異動する際の届け出や各種証明書を取得する際に、窓⼝で申請書類を記⼊する必要があり、書類の記⼊漏れや誤りなどによる訂正、職員よる申請内容の⼊⼒などをするため、市⺠が届け出に訪れた際の窓⼝滞在時間が長くなってしまうという課題を抱えていました。そこで志摩市が始めたのが、「書かない窓口」とスマートフォンアプリ「しまナビ」を使った窓口DXの取り組みです。書かない窓口は、職員が免許証などの本人確認書類で確認をとった後、聞き取り内容に応じて職員がシステムに入力すると、プレ印字された申請書類が出力されます。申請する市民が内容を確認し、誤りがなければ署名をしてもらい、異動届などの証明書が発行される仕組みです。しまナビはスマートフォンから使用できるアプリで、申請内容をスマートフォンで入力するとQRコードが作成されます。このQRコードを窓口に設置されているタブレット端末かバーコードリーダで読み込むことで、申請書が作成されるというものです。


 志摩市は令和3年(2021年)11月補正予算に「窓口申請支援システム整備事業」として、約690万円の予算を計上。令和4年(2022年)3月から書かない窓口、しまナビのサービスを開始し、窓口利用者の滞在時間削減に役立てています。さらに、志摩市ではマイナンバーカードを利⽤した各種⼿続のオンライン申請についての実証実験を導⼊業者と⾏っており、今後さらなる利便性の向上が期待されています。


まとめ

 日本の地方自治体における窓口業務のDX化は、行政の効率化と市民サービスの向上を両立させる鍵となる取り組みです。志摩市のようにデジタル技術の進化を活かしつつ、課題解決とイノベーションを進める姿勢が、地方自治体には求められる時代になっています。グローカル社では、自治体の情報を横断して一括検索できるツール「g-Finder」を活用したトレンドを見逃さない調査サービス「g-Finderレポート」を提供しています。自治体に関する調査や、自治体への提案・入札参加をご検討の方はお気軽にお問い合わせください。



出典:

志摩市HP:第2次志摩市総合計画 後期基本計画(2021年度~2025年度)

志摩市HP:書かない窓口及びしまナビ(QRコード作成アプリ)について

志摩市HP:令和3年度11月補正予算一般会計補正予算書(第9号)

総務省HP:11 マイナンバーカードやスマホアプリを活用し簡単申請書作成 【三重県志摩市】


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