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日本の課題となるラストワンマイル輸送―ドローンで活路は拓けるか



はじめに

 近年ニュースなどでも頻繁に目にすることの多くなってきた、物流においての課題される「ラストワンマイル輸送」という言葉があります。物流における各運送会社の倉庫などの最終拠点からエンドユーザーの元へと届ける物流サービスのことを意味しています。都市部では人口の増加やネットショッピングの普及によるラストワンマイル輸送が課題となっており、その一方で地方の山間部では人口減少によるドライバー不足などの影響でラストワンマイル輸送が課題となっています。


 この課題に対してドローン(無人航空機)を活用することで新たな解決策が期待されています。国土交通省では令和5年(2023年)に「無人航空機等を活用したラストワンマイル配送実証事業」として民間事業者や地方自治体を対象に公募を行っており、国や地方自治体から熱い視線が注がれています。今回はドローンを活用したラストワンマイル輸送について、島根県美郷町を事例に見ていきたいと思います。


美郷町の取り組み

 美郷町は島根県のほぼ中央に位置する自治体で、町の総面積に対して山林が約90%を占める自然豊かな地域です。しかし山間部の地方自治体の例にもれず高齢化や過疎化の進行が深刻なものとなっており、高齢化の影響を受けて自動車免許返納者も多くなり、さらに町内を走るJR三江線も利用者減少から廃線になるなど交通弱者が増え続ける一方という状況となっていました。


 そこで美郷町が目を付けたのがドローンによる物流網の構築です。美郷町では令和元年(2019年)から令和3年(2021年)にかけて主要な避難所に太陽光発電設備と3日分の蓄電池を設置する防災拠点整備事業を行っており、その余剰電力を活用して町内の防災公園と公民館合わせて6つにドローン物流の拠点を構築する「空の駅構想」を掲げて事業がスタートしました。


 令和2年(2020年)度に宅配業大手の佐川急便などと協力してドローンで実際に荷物を輸送する実証実験が行われました。この実験では荷物に対する衝撃はトラック配送よりも低くトラック配送できるものであればドローンでも配送可能ということ、パイロットの拘束が長時間になりコストを抑えるために1日あたりの飛行数を一定以上確保する必要があることなどが分かりました。

 

 また課題として町内を中国電力の送電線・配電線が架空されているため通過するために150m以上を飛行する必要があること、山間地であるためフライト中に一時的に通信が断絶する場面があり電波が断絶しないルート選定やローカル5Gなどの自営ネットワーク設営の検討必要性があることが判明しました。


まとめ

 日本におけるラストワンマイル輸送は、人口減少や地域格差の進行によりますます重要性を増しています。ドローンを活用したラストワンマイル輸送は、迅速で効率的な物流の実現や地方創生に寄与する可能性があります。また美郷町の例から、ドローン配送による光も見えた一方、実現には一定程度の課題もあることが分かりました。美郷町以外にも、自治体によるドローン物流の実証実験は多数行われており、先行事例の積み重ねが各地で行われています。

 

 グローカル社では、自治体の情報を横断して一括検索できるツール「G-Finder」を活用した調査サービス「G-Finderレポート」を提供しており、これらのような先行事例の調査が可能です。自治体に関する調査や、自治体への提案・入札参加をご検討の方はお気軽にお問い合わせください。



執筆者 グローカル編集部

地方創生コンサルティング、SaaS/レポートサービスを通して地域活性化を支援する、グローカル株式会社の編集部。地域活性化を目指す事例や自治体・地域企業/中小企業のDX化に向けた取り組み、国の交付金・補助金の活用例を調査・研究し、ジャーナルを執筆しています。

グローカルは、国内全体・海外に展開する地方発の事業をつくり、自立的・持続的に成長する地域経済づくりに貢献します。





出典:

<国土交通省HP:ドローン物流の社会実装に向けて~「無人航空機等を活用したラストワンマイル配送実証事業」を公募~>

<国土交通省HP:美郷町におけるドローン物流の可能性について>

<美郷町HP:ドローンを使った物流実用化調査の実施について>

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