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東京都町田市から考える自治体におけるメタバースの活用



はじめに

 近年、「メタバース」と呼ばれる仮想空間が急速に注目を集めています。メタバースは、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)技術を駆使し、現実世界とは異なる仮想空間を構築するものです。日本の地方自治体においても、メタバースの活用が注目されており、新たなコミュニケーション手段や地域振興に寄与する可能性が広がっています。今回は東京都町田市の取り組みに焦点を当て、メタバースの活用を決めた背景とその活用の仕方について見ていきたいと思います。


町田市のメタバース活用の取り組み

 町田市は東京都の西部に位置する都市で小田急線を使うことで都心に、JR横浜線を使うことで横浜市内へ簡単にアクセスできることから、ベッドタウンとして非常に人気がある地域です。また近隣自治体を含めて、多くの大学が立地することから多くの学生が暮らす土地でもあります。


 町田市では「町田市デジタル化総合戦略」を制定し、デジタル技術を活用した行政サービス改革を進めてきました。この計画内でもメタバースの活用について触れており、現行計画である町田市デジタル化総合戦略2022内でも、「アバター、AI音声、メタバース等の先端技術の活用」として言及されています。ではなぜ、町田市がメタバースの活用を進めているのでしょうか。町田市では社会変化に対応し、市が抱える課題を解決していくために「町田市未来づくり研究所」という政策研究機関を設置しており、この研究所が2020年(令和2年)に町田市の未来モデル「登録者1000万世界都市MACHIDA」をまとめました。


 この未来モデルでは市民が居住地に縛られず公共サービスを受けることができる時代が訪れると仮定し、自治体は自らの行政区域を越えて世界中の人にサービスを提供できる「行政法人」を立ち上げ、この行政法人が利用者に教育・医療福祉相談などの無形のデジタルサービスパックを提供して別の地域との交流を生活基盤として生きることが出来る環境をつくるという新たな自治体のあり方を打ち出しました。このデジタルサービスを提供するプラットフォームとして目を付けたのが、メタバースです。

この未来モデルやデジタル化総合戦略の策定を受けて、町田市では2022年(令和4年)4⽉から安価で使いやすいAI・アバター・メタバースなどの技術を組み合わせたDXプロジェクトを職員⾃らの⼿で開始しました。


 具体的な内容を見ていきましょう。まず町田市では、市のオンライン行政手続ポータル「まちだスマートシティドア」(通称:まちドア)内にメタバースを活用したポータルサイトを設けました。メタバース内でサムネイルを選択することで市政に関する様々な情報にアクセスすることができるというものです。また堅苦しい「お役所仕事」というイメージを払拭していくことを狙い、メタバースや3Dアバター制作ソフトなどを利用したトレンド感のある職員採用PR動画を職員が内製しました。今後はWeb会議やウェビナーの代替としての利⽤を主なターゲットとしてメタバースを推進していくほか、市民向けにスマートフォンなどで使用しやすいソリューションを模索しながら普及を目指していくとしています。


まとめ

 日本の地方自治体におけるメタバースの活用は、地域の振興や行政サービスの向上に大きな可能性を秘めています。一方でメタバースはあくまで市民とのコミュニケーションの手段に過ぎず、町田市のように大局的にどのようなビジョンを持ってメッセージを発していくかを予め定めておくことが重要になると考えられます。


 グローカル社では、自治体の情報を横断して一括検索できるツール「G-Finder」を活用した調査サービス「G-Finderレポート」を提供しています。自治体に関する調査や、自治体への提案・入札参加をご検討の方はお気軽にお問い合わせください。



執筆者 グローカル編集部

地方創生コンサルティング、SaaS/レポートサービスを通して地域活性化を支援する、グローカル株式会社の編集部。地域活性化を目指す事例や自治体・地域企業/中小企業のDX化に向けた取り組み、国の交付金・補助金の活用例を調査・研究し、ジャーナルを執筆しています。

グローカルは、国内全体・海外に展開する地方発の事業をつくり、自立的・持続的に成長する地域経済づくりに貢献します。





出典:

<町田市HP:町田市デジタル化総合戦略2022>

<町田市HP:Future Machida 2050>

<総務省HP:職員自らメタバースコンテンツを内製。職員採用PR動画にも活用 【東京都町田市】>

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