top of page

広い分野でのAI活用で業務効率化を狙う 東京都港区



はじめに

 近年、人工知能(AI)の技術が急速に進化しています。AIは様々な分野の課題で革新的な解決策を提供し、社会に大きな変革をもたらしています。日本の民間企業でも業界・業種を問わずにAIを活用することで、これまでの業務を大幅に効率化する例が見られるようになりました。この波は民間企業だけに留まらず、地方自治体においてもAIの活用により効率化やサービス向上を図ることが求められています。これまで福島県福島市のようにAIを活用した光学文字認識(AI-OCR)やソフトウェアロボットを活用してルーティン的な業務プロセスを自動化するRPAを活用して業務を効率化してきた事例を取り上げてきました。今回は東京都港区を事例に、自治体の業務におけるAIの活用の仕方について見ていきたいと思います。


港区のAI活用事例

 港区は平成29年(2017年)に「みなとワークスタイル宣⾔」を発表しました。この宣言は、全ての職員が意欲と能⼒を⼗分に発揮するために、職員は原則定時に退庁し、20時には全員退庁することや有給休暇を計画的に取得することなど、働き方改革を推進して健康的に働くことで質の高い区⺠サービスを提供することを目指すものです。これを背景に、港区では業務効率化を図ろうと翌年の平成30年(2018年)を「港区AI元年」と定め、AIやRPAの活⽤による区⺠サービス向上と働きやすい職場づくりに乗り出しました。


 では実際にどのような業務にAIが活用されているのかを見ていきます。まず議事録作成に、AIを活用した株式会社アドバンスト・メディアの議事録作成⽀援システムを採用。1000を超える会議に用いられ、従来は1時間程度の会議の議事録作成に4時間ほどの時間を要していましたが、導入後は30分~1時間で作成できるようになり、作業時間が大幅に短縮されました。


 また、住民の約8%を外国人が占める港区では、多言語に対応した情報発信も課題となっていました。平成23年(2011年)に港区のホームページをリニューアルした際に、英語・中国語・韓国語の3か国語に対応した機械翻訳機能を導入しましたが、翻訳精度が低く依然として課題となり続けていました。そこで白羽の矢が立ったのが、日本マイクロソフト株式会社の提供するAI を活用した翻訳機能「Microsoft Translator」です。任意の単語を登録して翻訳精度を高めることができ、行政特有の小難しい言葉や港区のみで使用している固有名詞を翻訳する際により正確な翻訳が期待できます。港区では平成30年(2018年)に日本マイクロソフト株式会社、豊橋技術科学大学、グローバルデザイン株式会社と「AIを活用した行政向け自動翻訳サービスの実証実験に関する協定」を締結し、翻訳精度の向上に向けた取り組みが続けられています。


 令和5年(2023年)からは、期限までに住民税の納付が確認できない住民や事業者などに対して、AI(人工知能)による納税案内電話の発信が開始しました。株式会社USEN-NEXT HOLDINGSの子会社である株式会社TACTのソリューションである「AI コンシェルジュ® for LGWAN」を使用した事業で、このソリューションは電話時に人間が発する言葉を音声認識でテキスト化し、辞書やデータベースと連動することで適切な回答を抽出。音声を合成して回答するものになっています。今まで日中の対応が難しかった市民にも納税案内をすることが可能になり、さらに架電数の増加や架電時間の拡大、架電結果の分析を効率的に行えるとしています。


まとめ

 港区の例からAI―OCRなどの定型的な事務作業だけでなく、電話発信などの人の手を介さなくてはならなさそうな業務までAIを用いたソリューションを活用することで効率化や市民サービス向上につなげることが可能になっていることが分かります。AIをはじめとしたデジタル技術の進歩は日進月歩で、これらの活用は自治体のトレンドとして今後も様々な方法が検討・模索されていくことが予想されます。


 グローカル社では、自治体の情報を横断して一括検索できるツール「G-Finder」を活用したトレンドを見逃さない調査サービス「G-Finderレポート」を提供しています。自治体に関する調査や、自治体への提案・入札参加をご検討の方はお気軽にお問い合わせください。



執筆者 グローカル編集部

地方創生コンサルティング、SaaS/レポートサービスを通して地域活性化を支援する、グローカル株式会社の編集部。地域活性化を目指す事例や自治体・地域企業/中小企業のDX化に向けた取り組み、国の交付金・補助金の活用例を調査・研究し、ジャーナルを執筆しています。

グローカルは、国内全体・海外に展開する地方発の事業をつくり、自立的・持続的に成長する地域経済づくりに貢献します。





出典:

<PRTIMES:東京都港区役所にて、AI音声認識を活用したAmiVoice 議事録作成支援システムが採用されました>

<日本マイクロソフト株式会社HP:港区 AI 元年! 「住民サービスの向上」と「働きやすい職場づくり」を両立させるべく⾃治体最先端のICT活⽤を志す港区が、Microsoft AI Platform を活用>

<港区HP:港区ホームページにおける「AI翻訳実証実験」を開始します>

<株式会社USEN-NEXT HOLDINGSHP:東京都港区で23区初のAIコール「納税案内電話」を『AIコンシェルジュ® for LGWAN』を用いて4/17より開始>

<港区HP:AI(人工知能)による納税案内電話を開始します>

<総務省HP:AIの積極的な活用による区民サービス向上と業務効率化 【東京都港区】>


最新記事

すべて表示

eスポーツでいい里づくり事業ー熊本県美里町の取組事例

はじめに 近年、eスポーツは地方自治体に、子どもから高齢者まで幅広い世代に向けた健康増進や就労支援等の領域で導入が進んでいます。eスポーツとは、「エレクトリック・スポーツ」の略で、主にコンピューターゲームやビデオゲームを使った大戦をスポーツ競技としてとらえる際の名称となっています。ゲームの特性上、年齢や性別、国籍、障害の有無に関わらず、誰もが参加できるのが特徴です。これまで本ジャーナルでも、地方自

神奈川県の子育て情報がLINEに一元化ー神奈川県の取組事例

はじめに 全国の地方自治体では、少子高齢化や人口減少の社会課題解決のための施策として、子育て支援に注力しています。子育て世代は、若い頃からスマホや携帯電話、PCに慣れ親しんでいる世代となっているため、高齢者世代に比べ自治体DXの施策は効果を発揮させていきやすいと言われています。今回紹介する神奈川県の事例は、県内在住者向けの子育て支援情報を「かながわ子育てパーソナルサポート」というLINEサービスで

デジタル田園都市国家構想交付金の活用事例―和歌山県御坊市

はじめに AI(人口知能)やIoT、ドローン(無人航空機)などの最新のデジタル技術を活用して、地域ごとの魅力や特性を損なわないようにしながら利便性や住民サービスの向上を目指す「デジタル田園都市国家構想」。岸田文雄首相が開始した政策で、現在地方創生や地域活性化に向けて取り組む自治体の政策の柱となっています。「デジタル田園都市国家構想交付金」制度も創設され、全国の地方自治体がこの交付金を活用して、様々

Comments


bottom of page