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北海道豊富町から考える酪農へのドローンの活用



はじめに

 酪農は日本の重要な一次産業の一つであり、私たちの食卓に美味しい乳製品が並ぶためにもなくてはならない産業です。しかし、牧場を経営していくに当たっては様々な課題があります。例えば、広大な敷地を持つ牧場の管理や家畜の健康状態の監視、牧草地の管理など、多くの時間と労力を必要とする作業があります。かねてから一次産業での担い手不足が指摘されている中で、こうした課題を解決して酪農の効率化を図る手段の一つとして、近年ドローンの活用が注目されています。今回は北海道豊富町での事例から、酪農・畜産へのドローンの活用について見ていきます。


豊富町でのドローンの活用

 北海道豊富町は札幌市から直線距離で約230キロの北海道北部に位置する自治体です。多くの地方自治体の例にもれず人口減少の波が押し寄せており、最盛期であった昭和30年代前半には1万人程度の人口がありましたが減少を続け、令和5年(2023年)6月には3,625人とかつての3分の1近くまで減ってしまっています。この豊富町で基幹産業となっているのが酪農です。雄大なサロベツ原野を望み、およそ13,000ヘクタールの広々とした牧草地で放牧型酪農を展開し、ストレスの少ない環境下で牛を飼育することが出来ています。その飼育している乳牛頭数はなんと驚きの約16,000頭と人口の4倍を超える頭数を飼育している状況となっています。そこでやはり課題となったのが、深刻な労働力不足です。酪農・畜産分野でもスマート農業による効率化が図られてきましたが、従来のものは牛舎での異常や発情、分娩の兆候を監視・発見するシステムなどが主流で、放牧型酪農を展開する同町のような事例ではなかなか活用が進んでいませんでした。


 そこで豊富町振興公社やNTTドコモなどがタッグを組み、始まったのがドローンを活用した牛追い「スカイカウボーイ」の取り組みです。牛追いとは1区画当たり150~200頭程度の群れで放牧している牛を授精の兆候や病気などを見つけるために毎日パドックに集める作業のことで、従来は人が大きな声を発しながら牧草地を歩き回るという方法で行われていました。この方法では1区画当たり平均で45分程度の時間がかかり、また起伏が激しい牧草地を歩き回るため肉体的な負担も非常に激しい業務でした。


 スカイカウボーイは、この牛追いをカメラとスピーカーを取り付けたドローンを遠隔で操作し、ドローンが空から犬の鳴き声など様々な音を発することで牛をパドックまで追い立てるというものです。令和元年(2019年)から実証実験が始まり、成果は如実に現れました。1区画当たりの作業時間は平均で10分もかからないほどに短くなり、約83%もの作業時間の削減につながりました。また削減した時間から1年あたりの労働対価削減効果を計算すると45万円もの削減効果があることが分かりました。この45万円という数値は実証実験として試験的に行っていたものであるため、本格導入をすることで、1年あたりの削減額は6倍の270万円まで増えると見込んでいます。この取り組みは注目を集め、総務省が行っている「ICT地域活性化大賞」の令和2年(2020年)表彰において優秀賞を受賞しました。


まとめ

 豊富町の取り組みから従来スマート農業の導入が進んでいなかった放牧型の酪農・畜産にドローンを活用することで大きな作業効率化や経費削減効果があることが分かりました。一次産業の人手不足・担い手不足による労働力不足は今後も続いていくことが予測され、また北海道では「OSO18」に代表される酪農・畜産分野への熊害も目立ってきています。この豊富町のような取り組みは、労働力不足の解消だけでなく熊害の早期発見や作業員へのリスク管理にも役立つものと言えるでしょう。


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執筆者 グローカル編集部

地方創生コンサルティング、SaaS/レポートサービスを通して地域活性化を支援する、グローカル株式会社の編集部。地域活性化を目指す事例や自治体・地域企業/中小企業のDX化に向けた取り組み、国の交付金・補助金の活用例を調査・研究し、ジャーナルを執筆しています。

グローカルは、国内全体・海外に展開する地方発の事業をつくり、自立的・持続的に成長する地域経済づくりに貢献します。





出典:

<豊富町HP:豊富町の人口>

<豊富町HP:豊富町の酪農>

<総務省HP:ドローンで牛追い“スカイカウボーイ”総務省HP:「ICT地域活性化大賞2020」受賞案件の発表>

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