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eSportsで高齢者のフレイル予防!東京都西東京市の事例

更新日:10月6日

はじめに

 近年、「eスポーツ」は世界的に急速に普及しており、プロ選手の活躍や巨額の賞金を懸けた大会などが開催されて注目を集めています。eスポーツとは、ビデオゲームを競技としてプレイし、その競技を観戦することで楽しむ新しいスポーツの形態です。日本でもeスポーツのブームが急速に広がっており、地方自治体でもeスポーツを地域活性化や地方創生に活用しようとする事例が増えています。本ジャーナルでも、群馬県の取り組み神奈川県横須賀市の事例について取り上げてきました。今回は東京都西東京市の取り組みに焦点を当てて見ていきたいと思います。


西東京市の取り組み

 西東京市は東京都の中央部に位置する自治体で、平成13年(2011年)に田無市と保谷市が合併することで生まれた、21世紀最初に誕生した市です。東側は練馬区に接し、市内には西武鉄道の西武新宿線・西武池袋線が通り、都心へのアクセスにも優れたベッドタウンとして人気のある都市です。世界最多の星が投影することが可能なプラネタリウムがあることで有名な「多摩六都科学館」、国史跡にも指定されている南関東最大級の縄文時代の大集落「下野谷遺跡」などの多彩な地域資源がある都市として知られています。


 この西東京市では、健康寿命の延伸や社会参加の支援などを目指して、eスポーツを活用した高齢者のフレイル(虚弱・老衰)予防事業に取り組んでいます。一般的には身体をあまり動かさないゲームがフレイル予防にどのように寄与するのか疑問が湧きますが、状況に応じて瞬時に必要な操作が求められるゲームは認知機能の維持だけでなく、社会参加率の向上や多世代交流の促進などの効果もあるとされています。


 西東京市は令和4年(2022年)から西東京市内の高齢者施設や高齢者クラブ、サロンなどに派遣して、高齢者にゲームを楽しんでもらう「健康ゲーム講座」事業を開始しました。養成研修を受講した市民ボランティアである「西東京市健康デジタル指導士」が講師を務め、ゲームの他に手足を動かす簡単な運動なども合わせた健康講座を展開しています。講座に使用しているゲームタイトルは、バンダイナムコエンターテインメントが提供している音楽ゲームで太鼓とバチを使ったコントローラーで遊ぶことができる「太鼓の達人」やハンドル型のコントローラーに対応したレースゲームで、通常のコントローラーを使ったゲームに馴染みの無い高齢者でも直感的に操作して楽しむことができるゲームを取り揃えています。


 令和4年(2022年)度には合計で246人が講座に参加しました。受講者を対象にしたアンケートでは、講座の満足度について「満足」または「やや満足」と回答した参加者が84%を占め、また講座に参加したいかとの問いに「とてもそう思う」、「そう思う」との回答が91%にも上るなど、参加者からは高い支持を受けています。西東京市では令和5年(2023年)度も健康ゲーム講座事業を継続しており、地域へさらなる効果の波及が期待されています。


まとめ

 日本の地方自治体によるeスポーツの活用は、新たなエンターテインメントとしての楽しみだけでなく、地域振興や若者への活躍する場を与えることなど地方創生に役立つ可能性を秘めているとされてきました。さらに西東京市の例から、普段ゲームに触れることがあまりない高齢者においてもフレイル予防に役立てようとする動きが目立ってきたことが分かります。今後、高齢化がより進行していく日本社会においてeスポーツが高齢者の健康維持の光となる可能性が考えられます。グローカル社では、自治体の情報を横断して一括検索できるツール「g-Finder」を活用したトレンドを見逃さない調査サービス「g-Finderレポート」を提供しています。自治体に関する調査や、自治体への提案・入札参加をご検討の方はお気軽にお問い合わせください。



出典:

<西東京市HP:令和4年度eスポーツ事業について>

<西東京市HP:eスポーツ出張講座を実施しています!>

<西東京市HP:フレイル予防の推進~高齢者の社会参加を進めます~>

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