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神奈川県横須賀市におけるICT活用 教育支援としてのeスポーツ等の導入



はじめに

 令和元年(2019年)から始まった文部科学省のGIGAスクール構想に伴い、全国の地方自治体では学校教育のICT活用が積極的に進められています。1人1台端末と高速大容量の通信ネットワークを整備することで、多様な子供達を取り残すことなく、公正に個別最適化され、資質・能力を育成できる環境を実現するために地方自治体では、教育環境の整備に取り組んでいます。横須賀市では、子供達へのICT教育推進のため、eスポーツなどを学べるICT施設を令和4年(2022年)に設立するなど、先駆的な事業を行われています。今回は、横須賀市の事例を見ていきます。


横須賀市のICT教育の取組

 横須賀市は、神奈川県南東部の三浦半島のほぼ中央部にあり、海岸線には海水浴場や横須賀港などが整備されています。横須賀市は、神奈川県内唯一の中核市であり、人口40万人で、藤沢市に次ぐ県内5番目に大きな市です。


 この横須賀市では、令和4年(2022年)にICTを活用した新たな教育施設への支援(25,081千円)が施策として打ち出され、同年4月1日にオープンした民間事業者が運営をする次世代型教育施設「スカピア」を支援しています。スカピアは、NTT東日本グループのテルウェル東日本、NTT東日本、NTTe-Sportsが運営しており、横須賀市のICT人材育成を支えています。横須賀市議会 令和4年(2022年)定例議会02月25日-04号で市長は、「スカピア内で開所する学童クラブでは、eスポーツやプログラミング等のICT教育はもちろん、ピアノ、そしてアートなどの多彩な習い事や送迎サービス等のメニューが用意されている」と答弁され、多様化する保護者のニーズに応える取り組みとしたいとしています。スカピアでは、NTTグループが運営する学童クラブ「Nキッズアカデミー」が開催され、プログラミング学習支援等に力を入れています。子供の学習習慣の定着や創造力や思考力が養える教育を、ロボットやIT技術に触れて受けられる施設となります。eスポーツについても、横須賀市議会 令和3年(2021年)定例議会 総務常任委員会・予算決算常任委員会総務分科会 03月09日-04号では、横須賀市プロモーション担当課長から「民間企業と連携しながら、まずはコミュニティスペースの開設であったり、eスポーツの大会の開催、それからeスポーツを教育関係者に理解してもらえるようなセミナーを開催していきながら、機運の醸成を図りながら、教育部門には、本格的にはそういった醸成を図った後に、検討というか、一緒に進めていくべきではないか」と答弁され、スカピア設立に向けた議論が展開されていました。


 令和5年(2023年)予算では、ICTを活用した教育支援として、GIGAスクールの更なる推進のために372,465千円が拠出されています。小学校(大規模校)9校と市内全中学校において、「デジタル教科書等に対応するためのネットワーク環境の強化」が推進されています。また、小学校全校に対しては1カ月に2回、中学校全校に対しては1カ月に1回、教員をサポートするICT支援員が派遣されることが決定しています。また、eスポーツに関する教育支援(6,709千円)として、市内高校生向けのeスポーツの推進・振興を通じた支援を行っている事例があります。令和5年(2023年)5月からは「ヨコスカイースポーツプロジェクト」という産学 民官連携の取組がスタートし、市内高校のeスポーツ部創立支援等が行われています。このプロジェクトは、eスポーツに関わる人々によって地域コミュニティの活性化、および新たな文化が定着することを目指しています。音楽・スポーツ・エンターテイメント都市の発展を促し、子供たちが希望をもって成長し続けることができる街を目指しています。令和5年(2023年)6月には、学校法人岩崎学園がプロジェクトに参画して、eスポーツを通した若者支援と地域貢献のために連携を図ることになり、地域の教育機関との連携も積極的に行われています。


まとめ

 他の地方自治体がeスポーツを取り入れた事例が見られます。例えば、山形県長井市がNTT東日本と連携し、デジタル田園都市国家構想に則り、デジタル技術を活用して地域課題を解決する「いつまでも便利に安心して暮らせるスマートシティ長井実現事業」の取り組みを令和3年(2021年)から行っています。また、長井市とNTTe-Sportsが連携してeスポーツスタジオ「Ne-st(ネスト)」という施設が令和4年(2022年)3月にオープンして、プログラミング体験学習等の教育支援が行われています。他には、東京都立川市にもNTTe-Sportsと連携して「RE:VISION」という施設が令和4年(2022年)に設立されています。このような事例からもわかるように、各地で地域活性化や地域課題の解決を目指すeスポーツ活用の取り組みが行われています。


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執筆者 平峯 佑志 Yushi Hiramine

スポーツ&ヘルスケア関連の事業会社を創業メンバーとして起業、新規事業立ち上げ/経営企画/WEBマーケティング/法人営業・自治体営業/知的財産管理等の業務に従事。スポーツ専門研究機関のシンクタンクでのPM業務を経てグローカルにジョイン。

グローカルに参画後は、健康管理システムのソリューション営業の型化/営業支援体制の構築支援、自治体向けの情報プラットフォームの営業支援/PM業務、公募調査ツール「G-Finder」の企画開発業務に従事




出典:

<横須賀市「横須賀市議会 令和4年(2022年)定例議会 2月25日―04号」>

<横須賀市「横須賀市議会 令和3年(2021年)定例議会総務常任委員会・予算決算常任委員会総務分科会 03月09日-04号」>

<横須賀市「令和4年度(2022年度)予算書」>

<横須賀市「令和5年度(2023年度)予算書」>

<横須賀市「令和5年度(2023年度)当初予算案の概要」>

<長井市「令和4年度施政方針」>

<スカピアHP>

<文部科学省HP:GIGAスクール構想の実現について>


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