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ドローンで費用削減! 千葉県君津市における橋梁点検の事例



はじめに

 自治体がドローンを用いた橋梁点検に取り組む姿勢が、近年ますます注目を集めており、橋梁の安全性を確保し、地域の安心・安全を守る効率的かつ革新的な手法として評価されています。

従来の橋梁点検は、専門家が高所作業車や足場を使用して点検することが一般的でした。例えば、高所に位置する橋梁の点検では、点検員の安全確保や点検にかかる時間が課題となっていました。しかし、ドローンの登場により、このような課題が大きく改善されることとなりました。

ドローンを使った橋梁点検は、多くのメリットをもたらします。まず、高所に位置する橋梁でも、ドローンを操作することで高架下の条件に左右されることなく安全に点検を行うことができます。また、ドローンは柔軟な機動性を持ち、点検箇所へのアクセスが容易です。これにより、通常よりも短時間で点検を完了することが可能となり、通行止めなどで起こる市民の生活への影響を最小限に抑えることができるのです。


千葉県君津市の取り組み

 国土交通省により、2m以上の橋梁やトンネルなどのインフラ施設について、5年ごとの近接目視点検を実施する義務が課せられています。千葉県君津市内には227橋もの橋梁があり、これらの点検費用だけでも5年間で1億円を超えるという膨大な負担がかかっていました。

当初は外部委託により点検を行っていたものの、高額な費用がかかる一方で、一定の基準を超える損傷は把握できても、橋梁全体の状況把握が難しくなっていました。また、橋梁点検車という特殊な大型車両を使用する必要があり、幅の狭い橋梁では通行止めを避けることができず、市民の利便性にも影響を及ぼすなど、さまざまな問題が生じていました。

 平成31年(2019年)2月に道路橋定期点検要領が改定され、ドローンなどの近接目視と同等と認められた新技術の活用が可能になりました。ドローン操縦の資格を取得した市内の職員が発案者となり、高所作業車等の特殊車両が必要な大規模な橋梁の点検にドローンを活用することを目的として、ドローン映像による橋梁点検の実証実験が開始されました。

 この実証実験は、千葉県君津市の職員によるデータ管理システムである㈱アイネットとの連携を通じて実現しました。また、ドローンの操縦に必要な人材育成やアドバイザーとしてのサポートはDアカデミー㈱が担当しており、機体の提供は㈱ジャパン・インフラ・ウェイマークが行っています。さらに、AI開発にはAutomagi㈱が参画し、木更津工業高等専門学校がAI開発のサポートを行っています。

 実際の運用では、小型で操作しやすい機体を選定し、職員の点検作業へのハードルを下げることを重視しました。データの取り扱いについては、㈱アイネットの提案により、大容量の映像データをストリーミングサービスの活用により効率的に処理しました。連携企業とのパートナーシップが技術面の課題解決に寄与しており、地域の安全と発展に向けた新たな展望を開拓しています。

 令和2年度(2020年度)では、点検対象の31橋のうち19橋にドローンを使用し、効果を確認しました。千葉県君津市は、専門家に委託して行う従来の点検手法と比較して、5年間で計4000万~5000万円減らせると見込んでいます。

 千葉県君津市道路整備課の担当者に取材したところ、現在は周囲360°の障害物検知が可能で、橋の下など非GPS環境でも飛行可能な小型ドローンを活用しており、以前よりも撮影しやすくなったとのことです。AI診断などは活用しておらず、人の目で映像を確認しています。また、どの橋梁にドローン点検が有効かのデータも蓄積できており、年間の点検数を45橋程度に平準化していきながら、費用削減できた分については橋梁の修繕費などに回す意向とのことです。

 このように、ドローンを活用することで従来の点検に比べて費用を抑えつつ、より効率的で正確な橋梁点検を実現することができるようになりました。市民の利便性を損なうことなく、安心して橋梁を利用できる環境を整えるために、千葉県君津市は積極的に新しい技術を取り入れて取り組んでいます。


まとめ

 自治体がドローンを用いた橋梁点検に取り組むことは、地域の発展と市民の安全に向けた重要なステップと言えるでしょう。安全で効率的な点検を実現し、橋梁の健全性を維持することで、地域の発展に寄与するとともに、市民の暮らしを守る存在となるでしょう。地域社会と技術の融合によって、より安全で持続可能な社会を築くための一つの成功事例として注目されています。

グローカル社では、自治体の情報を横断して一括検索できるツール「G-Finder」を活用したトレンドを見逃さない調査サービス「G-Finderレポート」を提供しています。自治体に関する調査や、自治体への提案・入札参加をご検討の方はお気軽にお問い合わせください。



執筆者 西村 東真 Toma Nishimura

地方金融機関に新卒入社し、個人顧客向けに投資信託や保険の提案など資産運用コンサルティングを実施。飲食店と消費者を結ぶリアルタイム予約プラットフォーム事業の起業に奔走したのちにプライマルにジョイン。eスポーツを活用した新サービス・事業立ち上げに向けた自治体ニーズ調査、ドローンの販売拡大に向けた営業企画、補助金調査、支援体制構築などに従事。グローカルでは特にインフラ領域の地域課題解決のため、新規事業立ち上げに向け活動。




出典:

<経済産業省HP:自治体のドローン・自動配送ロボット等の利活用促進に向けた調査報告>

<日経クロステック:近接目視の代わりにドローン、橋の定期点検で全国に先駆け 令和元年(2019年)6月14日>

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