はじめに
近年、eスポーツは地方自治体に、子どもから高齢者まで幅広い世代に向けた健康増進や就労支援等の領域で導入が進んでいます。eスポーツとは、「エレクトリック・スポーツ」の略で、主にコンピューターゲームやビデオゲームを使った大戦をスポーツ競技としてとらえる際の名称となっています。ゲームの特性上、年齢や性別、国籍、障害の有無に関わらず、誰もが参加できるのが特徴です。これまで本ジャーナルでも、地方自治体のeスポーツの取組として、神奈川県横須賀市や荒川区の取組みを取り上げてきましたが、今回は熊本県美里町が地域課題解決のためにeスポーツを活用している(取組)事例を取り上げたいと思います。
eスポーツでいい里づくり事業ー熊本県美里町の取組事例
熊本県美里町は、熊本県のほぼ中央に位置しており、熊本市から南東へ約30㎞、車で約40分程度の距離にある自然豊かな地域となっています。見渡す限りの棚田、里山の風景が至る所にあります。総人口は8,875名で、住民は高齢化が進んでおり高齢化率は年々上昇傾向にあると言われています。
美里町で、eスポーツが取り上げられたのは令和2年(2020年)9月に、美里町が一般社団法人熊本eスポーツ協会と地域課題解決にeスポーツを活用する連携協定を結んだことを契機としています。令和2年(2020年)12月に発行された広報みさとでは、同10月に開催された事業発表会で事業目的として①介護予防を軸にした高齢者の健康対策(シルバーeスポーツ事業)、②若年層のICT教育の充実(教育プログラミングの充実によるデジタル人材の育成)、③高齢者と若年層の世代間交流の促進の3つの柱で取り組むと発表されました。
令和5年(2023年)11月の美里町からの発信では、高齢者を対象にした事業としたeスポーツの大会やイベントには、120名の住民が参加されるなど、市民参加が継続して増加している取組となっています。同年11月には、佐賀県大町町と美里町で連携して「高齢者eスポーツ交流会」も開催されています。自治体間連携の起爆剤にもeスポーツが貢献している好事例となります。令和5年度(2023年度)美里町一般会計予算書では、総務費「eスポーツでいい里づくり事業委託料」として660,000円が計上されています。美里町議会令和5年(2023年)第1回3月定例会では、上田泰弘町長が「このeスポーツでいい里づくり事業ですが、高齢者の方がですね、これだけ集ってできる、されているっていうのは、実は全国で美里だけということを聞いております。この産・学・官でいろいろやっていきたいという思いの中で、いろんなデータを、仮にですね、データをとるとした場合、これだけたくさんの被験者になる、データを取れる高齢者の方々がeスポーツ一生懸命やってらっしゃるっていう地区はやっぱり美里だけというふうに聞いておりますので、今後もこの高齢者の方が集って、eスポーツでいきいきと生活をしてもらう、そういう環境というものは整えていきたいというふうに思いますし、この美里版のeスポーツが全国にですね、広まることを願っているところでございます。」と、町長が述べていることからわかるように、全国的にも先駆的な取組となっています。
まとめ
少子高齢化が進んでいる全国の地方自治体において、世代間の違いを越えて取り組むことができるツールとして、eスポーツ導入は今後も拡大していくことが予想されます。グローカル社では、日本全国の地方自治体の取組を調査分析して、今後ともジャーナルで情報発信をしていきます。
このような自治体のトレンドを見逃さないよう、グローカル社では、自治体の情報を横断して一括検索できるツール「G-Finder」を活用した調査サービス「G-Finderレポート」を提供しています。自治体に関する調査や、自治体への提案・入札参加をご検討の方はお気軽にお問い合わせください。
執筆者 平峯 佑志 Yushi Hiramine
スポーツ&ヘルスケア関連の事業会社を創業メンバーとして起業、新規事業立ち上げ/経営企画/WEBマーケティング/法人営業・自治体営業/知的財産管理等の業務に従事。スポーツ専門研究機関のシンクタンクでのPM業務を経てグローカルにジョイン。
グローカルに参画後は、健康管理システムのソリューション営業の型化/営業支援体制の構築支援、自治体向けの情報プラットフォームの営業支援/PM業務、公募調査ツール「G-Finder」の企画開発業務に従事
出典:
美里町「eスポーツでいい里づくり事業について」
美里町「令和5年度予算関係資料・令和5年度一般会計予算書」
美里町「広報みさと(2020.12)特集eスポーツで複合的地域課題の解決を!」
熊本eスポーツ協会「美里町eスポでいい里づくり事業スタート」
大町町「大町町×熊本県美里町「高齢者eスポーツ交流会」を開催しました」