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デジタル田園都市国家構想交付金の活用事例―和歌山県御坊市




はじめに

 AI(人口知能)やIoT、ドローン(無人航空機)などの最新のデジタル技術を活用して、地域ごとの魅力や特性を損なわないようにしながら利便性や住民サービスの向上を目指す「デジタル田園都市国家構想」。岸田文雄首相が開始した政策で、現在地方創生や地域活性化に向けて取り組む自治体の政策の柱となっています。「デジタル田園都市国家構想交付金」制度も創設され、全国の地方自治体がこの交付金を活用して、様々な事業に取り組んでいます。本ジャーナルでも特集を続けており、大阪府熊取町のスマートフォン向け子育て支援アプリを使った子育て支援のデジタル化事業兵庫県尼崎市の母子父子自立支援員が市民からの相談を受ける際に会話内容に応じた支援サービスの提案や相談記録票作成事務を⽀援するAIを使ったシステムの導入三重県鈴鹿市のAIと光学文字読み取り機能であるOCR技術を活⽤した市⺠サービスの向上などの事例を紹介してきました。今回は和歌山県御坊市の「キャンプ場を核としたデジタル周遊事業」について見ていきたいと思います。



御坊市の取り組み


 御坊市は和歌山県の中部に位置している自治体で、紀中・日高地域での中核都市です。人口は令和5年(2023年)12月の時点で、約22,000人を有しています。紀伊水道に面した海沿いの都市で、近海を流れている黒潮の影響で年間を通じて温暖多雨な気候で、冬季も霜が降りることはほとんどないことから、野菜や花卉の生産が盛んに行われています。また、御坊市近海は瀬戸内海から南下してくる南海流と黒潮支流が合流するポイントで様々な種類の魚などが生息している好漁場となっています。市内にある7つの漁港でアジやサバ、サワラなどが水揚げされる一次産業が盛んな都市として知られています。

 この御坊市では、デジタル田園都市国家構想交付金を活用して市内の野⼝オートキャンプ場を核としたデジタル周遊事業に乗り出しました。野⼝オートキャンプ場は市内を流れる日高川の河川敷に広がるキャンプ場で、宿泊キャンプ、日帰り(デイ)キャンプが楽しめるオートキャンプ場となっています。御坊インターチェンジ(IC)から車で約2分、御坊南ICから車で約6分と非常にアクセスしやすい立地で、車で5分~10分圏内にコンビニ、スーパー、酒屋、ホームセンター、スーパー銭湯が揃っているなどの好条件を活かして、御坊市では野⼝オートキャンプ場を「キャンピングカーの聖地」として盛り上げようと取り組みを進めています。今回の事業もその一環となっています。


 続いて、今回の事業の具体的な内容を見ていきましょう。御坊市では大別して2つの事業に取り組むとしており、1つ目が「デジタルサイネージによる地域周遊促進サービス」です。キャンプ場内にデジタルサイネージを設置することで、利⽤者に周辺の観光施設や飲⾷店のデジタル情報を発信。サイネージ上で各施設のSNSなどとリンクさせることで、情報の量と質を向上して利用者を各施設へ誘導することを目指します。また、災害時にハザードマップなどを併せて発信することで、利用者に安全安⼼にキャンプ場を利用してもらえるような環境を整備します。


 続いて2つ目が、「デジタル周遊拠点(RVパーク)整備・プロモーション」です。RVパークとはキャンピングカーや車中泊の旅行者を対象にしたキャンプ場のことで、日本RV協会が認定を行っています。御坊市では、キャンプ場内の空きスペースにテントサイトよりも安価で気軽に利⽤できるRVパークを設置し、利⽤者の拡⼤とデジタル周遊への誘導を図ります。このRVパークではオンライン予約と電⼦決済を導⼊することで、⾮接触でのチェックインを可能とします。また、利⽤者へ実施したWEBアンケート結果と先述のデジタルサイネージを連携させて、地域への誘引効果を⾼め、利用者の市内での周遊を図るとしています。さらに利⽤促進に向けたプロモーションを行う予定で、動画配信者と協働でイベント開催や出展を⾏い、情報拡散をしていく予定です。


 御坊市では、今回の事業にデジタル田園都市国家構想交付金から9,750千円分の採択を受けています。また令和5年(2023年)度予算にも、9,500千円を計上しています。御坊市議会議事録によると、 デジタルサイネージやRVパークの完成は令和6年(2024年)3月を予定しており、完成以降にどのような成果を上げるのかに注目が集まります。



まとめ


 コロナ禍が終息しインバウンドが復活して来た中で、観光資源を有する地域間同士での競争が激しさを増しており、ただ観光客を呼び込むだけでなく周遊性や客単価の向上などの視点が求められています。デジタル技術を活用して観光振興を目指す事業は、奈良県奈良市なども取り組んでおり、今後も注目が集まる分野になるのではないでしょうか。


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執筆者 グローカル編集部

地方創生コンサルティング、SaaS/レポートサービスを通して地域活性化を支援する、グローカル株式会社の編集部。地域活性化を目指す事例や自治体・地域企業/中小企業のDX化に向けた取り組み、国の交付金・補助金の活用例を調査・研究し、ジャーナルを執筆しています。

グローカルは、国内全体・海外に展開する地方発の事業をつくり、自立的・持続的に成長する地域経済づくりに貢献します。






出典:

御坊市HP:イベント連携(キャンピングカー)

御坊市HP:令和5年度予算の概要

御坊市HP:御坊市  令和5年6月定例会 06月16日-01号

内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局・内閣府地方創生推進事務局HP:デジタル田園都市国家構想交付金交付対象事業の概要 和歌山県

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