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スマート農業で地方創生を目指す~岐阜県の事例~

更新日:11月17日

はじめに

 多くの地域で基幹産業の一つとなっている「農業」。その農業では現在の担い手の高齢化や新規参入者の減少による人手不足が深刻な問題となっており、作業の省力化・効率化が求められています。それらの課題を解決すべく、国や地方自治体はICTやロボットを活用した「スマート農業」に向けた支援を推進して地方創生を目指しています。なかでも岐阜県は全国的に見ても早期の段階から取り組みを始め、令和3年度までに12の産地でスマート農業の取組みを開始し、新たに250の経営体がスマート農業機器を導入するなど普及が進んでいます。今回は岐阜県がどのようにスマート農業推進に取り組んだのかを見ていきます。


岐阜県の取り組み

 岐阜県ではスマート農業技術を推進するための施策や最新技術、活用事例などを取りまとめた令和元年度からの五か年計画である「岐阜県スマート農業推進計画」を全国で初めて策定しました。さらに農林水産省の「みどりの食料システム戦略」策定やロシアのウクライナ侵攻の影響による物価高騰などの社会情勢の変化を踏まえて、当初の計画を前倒しして令和5年度に「岐阜県スマート農業推進計画(第2期)」を策定するなど、早め早めで施策を行ってきたことが分かります。


 実際に行われている取り組みに目を向けてみると、特徴的なのは農業従事者への情報発信に非常に力を入れている点です。令和2年に開設した「岐阜県スマート農業推進センター」など県内4か所でリモコン式草刈り機やアシストスーツなどの貸し出しをしており、農業従事者がスマート農業に触れやすい環境づくりをしています。また先述のスマート農業推進計画内でも県内農業従事者のスマート農業機器の導入事例を導入背景や効果、機器を使いこなすアドバイスなど事細かに発信しています。


 続いて具体的にどのような技術が導入されているかをいくつか見てみましょう。1つ目は岐阜市内で水稲栽培を行う家族経営の農業法人の例です。この法人では先代から経験と勘で営まれてきた農業を形式知化することで後継者育成につなげたいと考えていました。そこで農機と連携してデータを収集・活用できる、株式会社クボタの営農支援システムである「KSAS (Kubota Smart Agri System)」を導入。作業工程を見える化することによって後継者育成や作業指示の効率化に成功しました。


 2例目は羽島市の牧場の事例です。この牧場は常時雇用の従業員が3人しかいないのに対して60~70頭の乳牛を飼育しており、牛の行動管理が負担となっていました。そこでデザミス株式会社がNTTテクノクロス株式会社などと技術提携して開発したサービス「U-motion®」を導入し、牛に取り付けるタグから採食、飲水、反芻などの行動をリアルタイムで確認できるよう改善されました。さらにこのサービスはクラウド上にデータを保存するため、牛の日々の行動を時系列で確認でき、従業員同士での情報共有なども簡単に行えるようになりました。


まとめ

 ご紹介した事例以外にも岐阜県では多くの営農者がスマート農業に取り組んでいます。背景には、やはり県が早期から取り組みに着手してきたことが挙げられます。グローカル社では、自治体の情報を横断して一括検索できるツール「G-Finder」を活用したトレンドを見逃さない調査サービス「G-Finderレポート」を提供しています。自治体への提案や入札参加をご検討の方はお気軽にお問い合わせください。




出典:

<岐阜県HP:岐阜県スマート農業推進計画(第2期)>

<株式会社クボタHP:クボタのスマート農業>

<デザミス株式会社HP:PRODUCT>

<NTTテクノクロス株式会社HP:牛の行動分析 U-motion®>

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