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デジタル人材育成でスタートアップ支援 沖縄県沖縄市の取り組み

更新日:11月17日

はじめに

 現代のビジネス環境は急速に変化しており、デジタル技術の進化が経済活動に大きな影響を及ぼしています。特に中小企業は、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進して国際的な競争の中でも戦える力を伸ばして、労働者から選ばれる魅力的な就労先になっていくために、新たな取り組みが求められています。こうした中で、日本の地方自治体は新たな役割を求められ、中小企業のDX化支援に力を注いでいます。本ジャーナルでも、これまでに長野県松本市の事例を紹介してきました。今回は沖縄県沖縄市の事例について見ていきます。


沖縄市の取り組み

 沖縄市は沖縄本島の中央部に位置する自治体で、昭和49年(1974年)に当時のコザ市と美里村が合併することで誕生しました。沖縄県の県庁所在地である那覇市に次ぐ第二の都市で、令和5年(2023年)8月の時点で約14万人の人口を誇っています。アメリカ空軍の嘉手納基地が立地することで知られ、アメリカ軍人向けの店も多く立地することから、中央パークアベニューやコザゲート通りなどの異国情緒が溢れる街並みが魅力で多くの観光客が訪れる観光地でもあります。

 この沖縄市では、モータリゼーションの発達や郊外にショッピングモールのような大型商業施設が進出したことなどによって、中心市街地の商店街で閉店してしまう店舗が相次ぎ、空き店舗率が増加するなどの中心市街地の衰退や空洞化が課題となっていました。また、IoTやAI(人工知能)などに精通しているデジタル人材の需要が沖縄市でも高まっており、デジタル人材の平均所得も高いことから、沖縄市の課題になっている高い失業率(6.0%)や都道府県別平均所得がワーストの沖縄県内の中でも低い水準にある沖縄市民の所得を改善するため、質の高い雇用の創出および市民所得を向上させる付加価値の高い産業の振興を図る必要性がありました。


 これらの課題を解決するため、沖縄市は創業支援に乗り出しました。令和3年(2021年)年度から計画期間が始まった「第5次沖縄市総合計画」内でも、重要施策の一つとして「雇用の安定と創業支援の充実を図る」と位置付けられ、「地域金融機関や沖縄商工会議所などと連携し、創業者へのワンストップ相談や出店に関するマッチング支援など、創業者等の支援に取り組む。ICT 人材育成にかかるプログラミングスクールなどを開催し、積極的な情報発信により市内への産業集積を図る。」と明記しています。


 この政策の一環として開始したのが「創業支援及びデジタル人材育成によるスタートアップエコシステムの形成」事業です。新たな産業を担うベンチャー企業の集積地を形成することを目指して、企業・民間投資・人材を流入させるため、中心市街地にワンストップ創業支援窓口「Startup Lab Lagoon(スタートアップラボ ラグーン)」を設置。プログラミングスクールやコワーキングスペース、シェアオフィスを併設し、琉球銀行などの地元金融機関と連携した創業支援の実施やデジタル人材の育成などの推進を始めました。

 令和4年(2022年)夏までの時点で約2,200件の創業相談を行い、そのうち約350人の創業支援を行いました。またデジタル人材の育成では、プログラミングスクールを通して400人以上のスクール卒業生を輩出。学んだプログラミングスキル等を活用し104人が就職しました。フリーランスとしての独立を含んだ創業者数は27人以上、転職に成功した人も21人を超えるなど、多くの人材が地域へと羽ばたいていきました。


まとめ

 地方自治体の中小企業支援策は、中小企業のDX化を進め、地域経済の発展に貢献する重要な役割を果たします。沖縄市のように、地域で生まれる新たなスタートアップを推進することは、地域活性化に資する重要な取り組みと言えるでしょう。

 

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出典:

<内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局HP:創業支援及びデジタル人材育成によるスタートアップエコシステムの形成>

<沖縄市HP:「夏のDigi田甲子園」で沖縄市が県代表に!>

<沖縄市HP:第5次沖縄市総合計画基本構想前期基本計画2021-2025>


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