はじめに
近年、日本の地方自治体がスマートヘルスケアに積極的に取り組んでいる姿が目立っています。スマートヘルスケアは、血圧などの健康に関する身体情報とデジタル技術を結びつけ、個々の健康管理を支援する手法です。この革新的なアプローチは、高齢化の進行が著しい日本社会の健康増進や地域福祉の改革に大きな可能性をもたらしています。これまでも本ジャーナルでは、愛知県豊田市や大阪府堺市などの取り組みについて紹介してきました。今回は「デジタル田園都市国家構想交付金」を活用して、新たにスマートヘルスケアの取り組みを始める、新潟県上越市について見ていきます。
上越市の取り組み
上越市は新潟県の南西部に位置する自治体で、令和5年(2023年)1月の時点で約18万人の人口を抱える新潟県で3番目に大きな都市です。平成17年(2005年)に旧上越市、安塚町、浦川原村などの合計で14の市町村が合併することで誕生しました。市の西側には日本海が広がり、古くから海上交通の要衝として使われてきた直江津港が立地することで知られているほか、佐渡弥彦米山国定公園や数多くの県立自然公園を有する美しい景観や多様な自然に恵まれた土地です。
この上越市ではデジタル田園都市国家構想交付金を活用して、スマートヘルスケア事業「健康DX」事業に着手しています。この健康DX事業はマイナンバーカードとマイナンバーカード取得者が行政手続きのオンライン申請などができるポータルサイト「マイナポータル」を使用。健康アプリを使ってマイナポータルから健康診断の情報を取得し、そのデータに基づいた健康維持に向けたアドバイスを受けられる仕組みです。また、歩数や血圧、体重、腹囲などの身体データ・活動データを一括管理できるようになります。さらに健康維持をするインセンティブとして、健康づくり活動に応じて「健康づくりポイント」が付与されるシステムを導入する予定です。この一連の事業を展開することで、将来的な医療費や介護給付費の抑制も検証するとしています。
この事業は令和5年(2023年)の当初予算に「健康DX事業の実施」として、2,891万円の予算を計上。さらに公募型プロポーザルが実施され、NTTコミュニケーションズ株式会社に業務委託されることが決定しています。スケジュールを見てみると、令和5年(2023年)8月からアプリ機能構築・仕様調整を実施しており、10月から上越市内事業所での利用実証実験を予定しています。令和5年(2023年)は目標として300人の参加を目指しており、翌令和6年(2024年)に1,500 人、令和7年(2025年)には3,000 人まで増やしていく見通しです。
まとめ
地方自治体のスマートヘルスケアへの取り組みは、単なる健康管理だけでなく、地域社会全体の健康づくりや医療制度の改革にも寄与する可能性があります。今後も技術の進化と連携を深めながら、取り組む地方自治体ごとの個性を尊重したスマートヘルスケアの展開が進むことでしょう。グローカル社では、自治体の情報を横断して一括検索できるツール「g-Finder」を活用したトレンドを見逃さない調査サービス「g-Finderレポート」を提供しています。自治体に関する調査や、自治体への提案・入札参加をご検討の方はお気軽にお問い合わせください。
執筆者 グローカル編集部
地方創生コンサルティング、SaaS/レポートサービスを通して地域活性化を支援する、グローカル株式会社の編集部。地域活性化を目指す事例や自治体・地域企業/中小企業のDX化に向けた取り組み、国の交付金・補助金の活用例を調査・研究し、ジャーナルを執筆しています。
グローカルは、国内全体・海外に展開する地方発の事業をつくり、自立的・持続的に成長する地域経済づくりに貢献します。
出典:
<上越市HP:上越市健康DX事業企画運営業務委託に係る仕様書>
<上越市HP:広報上越(2023年4月号 No.1135)Web版>
<上越市HP:上越市健康DX事業企画運営業務委託に係る公募型プロポーザルの実施結果>
<内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局・内閣府地方創生推進事務局HP:交付対象事業の概要 分野・都道府県別(令和4年度第2次補正予算)新潟県>
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