はじめに
近年、テクノロジーの進化に伴い、私たちの生活は大きく変わりました。その変革の一環として、スマートヘルスケアが注目を浴びています。スマートヘルスケアとは、健康情報技術とIoTを組み合わせて、個人の健康管理を支援するアプローチです。個人の健康データを収集・分析し、予防医療や健康状態の監視、疾病の早期発見などが可能となります。特に高齢化の進行が著しい日本の地方自治体では、この新たな健康ケアのアプローチを通じて、市民の生活の質向上と医療サービスの効率化を実現する可能性を秘めています。これまで、本ジャーナルでも愛知県豊田市や神奈川県横浜市の事例を紹介してきました。今回は大阪府堺市の取り組みに注目して見ていきたいと思います
堺市の取り組み
堺市は大阪市に次ぐ、大阪府第二の都市です。約81万人の人口を誇る大都市で、大阪湾沿いに大工場が立ち並ぶ堺泉北臨海工業地帯は大阪府を代表する工業地帯となっています。その一方、仁徳天皇陵古墳に代表される世界遺産にも登録された「百舌鳥古墳群」が点在するなど、豊かな歴史的建造物も保有する多彩な魅力を有する都市です。
この堺市では市民の健康寿命延伸を目指して「堺市健康寿命延伸産業創出コンソーシアム」を立ち上げ、積極的に産官学連携をしながら最新技術を活用したスマートヘルスケア事業に取り組んでいます。令和3年(2021年)にはNTT PARAVITA 株式会社、西日本電信電話株式会社(NTT西日本)、パラマウントベッド株式会社、大阪大学大学院医学系研究科と連携し、睡眠の状態を検知するセンサーを使った「ICTを活用したひとり暮らし高齢者等の見守りに関する実証プロジェクト」を開始しました。
このプロジェクトでは堺市内のひとり暮らし高齢者などを対象に、寝具にシート型のセンサーを設置することで睡眠リズムを見える化する機器「Active Sleep Analyzer」を設置。睡眠リズムのレポートである「ねむりのお便り」を配信するほか、保健師による電話での健康アドバイスを通じて高齢者の健康管理の支援を実施するというものです。睡眠不足に陥ると、脳や心身に様々な悪影響が起こることが知られており、集中力・免疫力などの低下や高血圧・糖尿病などの生活習慣病リスクが上昇してしまう恐れがあります。また睡眠不足だけではなく睡眠が過剰になることによって認知症のリスクが高まってしまうとされており、様々な健康リスクを抱える高齢者の健康寿命を延ばすことを睡眠からアプローチする取り組みになっています。
まとめ
地方自治体は、スマートヘルスケアの活用を通じて、住民の健康と幸福を向上させる一翼を担うことができます。テクノロジーの力を借りて、より効率的で質の高い医療サービスを提供することが、未来の健康な地域社会を築くための一歩となることが期待されています。今後、より深刻な高齢化が予測されている日本の地方自治体においてスマートヘルスケアは今後の健康促進事業や地域福祉事業のトレンドとなっていくことが予想されます。
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執筆者 グローカル編集部
地方創生コンサルティング、SaaS/レポートサービスを通して地域活性化を支援する、グローカル株式会社の編集部。地域活性化を目指す事例や自治体・地域企業/中小企業のDX化に向けた取り組み、国の交付金・補助金の活用例を調査・研究し、ジャーナルを執筆しています。
グローカルは、国内全体・海外に展開する地方発の事業をつくり、自立的・持続的に成長する地域経済づくりに貢献します。
出典:
<NTTPARAVITA HP:ねむりの見守り>
<NTT PARAVITA HP:堺市におけるICTを活用したひとり暮らし高齢者等の見守りに関する実証プロジェクトの開始について~睡眠リズムの見える化で高齢者の安心な暮らしを支援~>
<堺市HP:ICT を活用したひとり暮らし高齢者等の見守りに関する実証プロジェクトへの参加者を募集します―睡眠リズムの見える化で高齢者の安心な暮らしを支援―>