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注目集めるスマートヘルスケア 愛知県豊田市とNTTドコモの取り組み

更新日:10月6日

はじめに

 近年、日本は高齢化社会を迎える中で、健康寿命の延伸や医療費の削減など健康に関する課題に直面しています。特に高齢化の進行が著しい地方の自治体において、これらの課題は自治体の持続可能性に関わる重大な問題です。こうした課題に対応し、地域住民の健康を維持・向上させるために、地方自治体ではスマートヘルスケアの取り組みが広がっています。スマートヘルスケアとは健康とテクノロジーを融合させることで個々の健康を促進し、医療や介護の効率化を図るアプローチです。今回は愛知県豊田市とNTTドコモの取り組みを事例に、地方自治体におけるスマートヘルスケアの取り組みについて見ていきたいと思います。


豊田市のスマートヘルスケアの取り組み

 豊田市は株式会社NTTドコモ東海支社と協力して、今後ますます深刻化することが予想される高齢化社会へ適応を図るためAI技術やICTを活用した新しい高齢者のヘルスケア・見守りのあり方を検証しようと高齢者向けのスマートヘルスケア事業「ミライの健康」と「イマの見守り」を提供する実証実験を令和3年(2021年)に開始しました。ミライの健康、イマの見守りの双方とも、NTTドコモが提供する「健康マイレージ」アプリ内で収集した各種データでAIなどを活用したリスク推定、改善サービス等のリコメンドなどを行う機能になります。


 ミライの健康はスマートフォンからアプリの使用履歴や位置情報、歩数や睡眠など生活習慣に関する情報を収集することで、AIが将来的なフレイル(虚弱・老衰)のリスクを推定するものです。フレイルのリスクがあると推定された住民は、自治体の提供している健康サービスなどがリコメンドされる仕組みになっています。またこの実証実験では、株式会社Mealthy(メルシー)が提供する食事支援アプリと連携し、住民のフレイルリスクの原因となっている要因にアプローチする食事支援も行われました。この食事支援アプリでは、食事の写真を送信すると、AIの判断を元に管理栄養士がアドバイスを提供する仕組みになっており、住民それぞれのフレイルリスクに合わせた食事支援をすることが可能となっています。


 一方のイマの見守りは4つの見守り機能を備えたサービスです。1つ目は「災害時の見守り」です。災害発生時に住民へ避難所情報を提供し、位置情報を活用して住民が避難したかの結果を記録できます。これにより自治体は住民の避難状況の把握と避難所の飽和度を把握することが可能になります。2つ目は「転倒、不規則な心拍の見守り」です。利用者が装着したスマートウォッチから検知した転倒、不規則な心拍などに応じて救急車を呼んだり、家族や近隣住民などへの情報提供をしたりする機能です。3つ目は「日常の見守り」で、日常的に使用するスマートフォンの情報から日々の活動状況が確認できない場合、家族や近隣住民などへの情報提供を行います。最後の4つ目が「その他緊急時の見守り」で、利用者本人が自らの意思で家族や近隣住民へSOSを発信する仕組みとなっています。


 NTTドコモでは豊田市での実証実験などを経て、令和4年(2022年)9月に健康マイレージ内にフレイル推定AI機能や見守り機能などの新機能として追加し、実際にサービス開始が開始されています。


まとめ

 スマートヘルスケアは、地方自治体において健康とテクノロジーの融合を通じて住民の健康増進と医療・介護の効率化を実現する重要な取り組みです。日本社会において歯止めが効かなくなっている高齢化に対応するための方策として、今後より地方自治体からの注目が集まっていく分野になるでしょう。


 グローカル社では、自治体の情報を横断して一括検索できるツール「g-Finder」を活用した調査サービス「g-Finderレポート」を提供しています。自治体に関する調査や、自治体への提案・入札参加をご検討の方はお気軽にお問い合わせください。


出典:

<豊田市HP:報道発表資料 「ミライの健康」と「イマの見守り」を提供する実証実験を実施します>

<NTTドコモHP:豊田市とドコモがふだんの生活情報から「ミライの健康」と「イマの見守り」を提供する実証実験を開始~新しいヘルスケアの在り方を提案~>

<NTTドコモHP:自治体向けに提供する住民の健康増進サービス「健康マイレージ」に健康支援機能や見守り機能を追加-スマートフォンを活用した住民の健康増進サービスや高齢者見守りなど、自治体の取り組みを推進->

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