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スマートヘルスケアでリハビリを補助 神奈川県横浜市の事例

更新日:10月6日

はじめに

 現代社会において、テクノロジーの進化は私たちの生活に革命をもたらしています。その中でも、スマートヘルスケアは健康管理や医療サービスの領域に大きな変革をもたらすポテンシャルを秘めています。スマートヘルスケアとはスマートフォンやウェアラブルデバイスなどを活用して、個人の健康状態をモニタリングすることで必要な情報を医療機関やケアプロバイダーと共有するシステムです。これにより、個人の健康管理が効果的かつ迅速に行えるだけでなく、地域全体の健康状態の把握や疾病の早期発見、予防策の展開が可能となります。これまで、本ジャーナルでも愛知県豊田市の事例を紹介してきました。今回は神奈川県横浜市の取り組みについて注目して見ていきます。


横浜市の取り組み

 横浜市は言わずと知れた神奈川県の県庁所在地で、日本全体で見ても指折りの大都市です。古くから栄えた港町としての歴史を持ち、赤レンガ倉庫や横浜中華街などの観光地や海に面した山下公園といった美しいウォーターフロントなど様々な魅力を持つ都市です。一方で、以前に本ジャーナルでも取り上げたドローンを活用した下水道管の点検など、地域課題に対して最新技術を積極的に活用する先進的な行政に取り組む都市でもあります。


 その横浜市では令和5年(2023年)、NTTコミュニケーションズ株式会社、株式会社NTTデータ経営研究所の2社と共同で「スマートフォンアプリ『みえるリハビリ』を活用した心疾患患者の自発的リハビリモデル事業」を開始しました。


 心疾患は日本人の死因第2位で、その中でも心不全は再発率・再入院率ともに高いことで知られています。心疾患の運動療法である心臓リハビリテーションは再発・再入院予防に効果があることがこれまでの研究で明らかにされていますが、退院後の外来心臓リハビリテーションの実施率は約7%と非常に低いものとなっています。その要因の1つが、外来心臓リハビリテーションができる医療機関などが患者の自宅近くにないこと、通院することが難しいことなどの課題があります。横浜市では、心臓リハビリテーション実施件数が国や神奈川県と比較すると低い状況となっており、診療体制の構築や心臓リハビリテーション実施施設の拡充などの取り組みで心臓リハビリテーションの推進を図っています。


 今回の事業も心臓リハビリテーション推進の一環です。この『みえるリハビリ』は、NTTと東レ株式会社が開発した着衣型生体信号検出デバイス「hitoe®」から検出した運動量や運動強度などのデータを見える化するアプリケーションです。アプリケーション内では、横浜市の心臓リハビリテーション強化指定病院が発行する運動処方箋に記載された推奨される「運動の強さ(METs)」をアプリで確認することができるため、自宅でも安心してリハビリに取り組むことが可能となります。また1週間の運動目標時間を設定し、目標達成状況に応じたフィードバックメッセージの送信、ポイント/レベルシステムやウォークラリーなどの要素を採り入れ、参加者が運動を継続できるようなシステムも用意されています。

 この事業を踏まえてNTTグループは「みえるリハビリ」での行動変容アプローチの高度化を行い、全国の自治体が運動習慣獲得支援・疾患の再発防止に取組むための提案を行い、社会実装を目指すとしています。また横浜市も医療政策へのさらなるICT活用を検討するとしています。


まとめ

 スマートヘルスケアの活用は、高齢化が進む日本において健康増進と医療の質の向上に大きな希望をもたらす施策として期待が寄せられています。横浜市での取り組みでどのような効果が現れるのか目が離せません。


 グローカル社では、自治体の情報を横断して一括検索できるツール「g-Finder」を活用した調査サービス「g-Finderレポート」を提供しています。自治体に関する調査や、自治体への提案・入札参加をご検討の方はお気軽にお問い合わせください。



出典:

<NTTコミュニケーションズ株式会社HP:横浜市とNTT Com、NTTデータ経営研究所「みえるリハビリ」を活用した心疾患患者の自己リハビリモデル事業を開始>

<横浜市HP:「みえるリハビリ」を活用した心疾患患者の自発的リハビリモデル事業を開始>

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