top of page

デジタル田園都市国家構想交付金の活用事例―福井県



はじめに

 令和3年(2021年)に岸田内閣の下で始動した「デジタル田園都市国家構想」。地域の豊かさを維持しながら、都市と同様、または違った利便性と魅力を備えた、独自の魅力を有する新たな地域づくりを目指す取り組みです。このプロジェクトを実現するため、「デジタル田園都市国家構想交付金」制度も創設され、全国の自治体で様々な事業が行われています。本ジャーナルでも、神奈川県逗子市の監視カメラを使った人流把握事業神奈川県箱根町の救急通報にスマートフォンを用いて状況把握に役立てるシステムの導入など、特徴的な取り組みを取り上げてきました。今回は福井県の防災分野へのドローンの活用について見ていきたいと思います。


福井県の取り組み

 福井県は北陸地方に位置する自治体で、令和5年(2023年)8月の時点で約745,000人の人口を抱えています。北側には日本海が広がり、この豊かな漁場から獲れる越前ガニや越前ガレイなどの海産物が有名です。また作付面積が全国1位を誇るコシヒカリに代表されるコメ作りや里芋などの農作物生産も盛んなほか、最高級の黒毛和牛として知られている若狭牛などの畜産など、一次産業全般が盛んな県となっています。


 福井県ではデジタル田園都市国家構想交付金を活用して、「ふくいの空から県⺠を守るドローン防災事業」に取り組んでいます。この事業では、モバイル通信を使った⽬視外で4kmの⾃動⾶⾏機能を有する災害⽤防水ドローンを県庁や各土木事務所に合計で8台を配備。県境道路や行き止まり道路、県内全域の河川について、災害時に⾃動で⾶⾏するルート、合わせて432カ所を事前に登録することで、災害発生時に災害現場の早急な状況把握に役立てるものです。また危機対策防災課と連携して、災害⽤ドローンで撮影した被災情報を早期に県が配信しているSNS(ソーシャルネットワークサービス)や電⼦メール、HPで県⺠に周知する災害情報発信サービスも並行して導入する予定です。


 福井県では令和4年(2022年)12月に、このドローン防災事業に関する実証実験を実施。目視外自動飛行により、土砂崩れなどの影響で交通が寸断された被災箇所の調査が可能となるなど有効性が確認され、この結果から本格実装が決まりました。令和4年(2022年)度2月補正予算に198,468千円を計上し、デジタル田園都市国家構想交付金にも同額の採択を受けています。予算の内訳を見てみると、まずドローン整備費用が各土木事務所1台ずつ配備すると30,000千円程度で、県内の全河川にドローンを飛ばせるよう資格を有しているコンサル業者などに事前のルート登録を行ってもらう費用が約160,000千円。実際に災害が起こった場合に、ドローンによって撮影されたデータを確認して、どのような災害が起きたかを把握する費用が5,000千円ほどになっています。


 災害が実際に発生した際に、どのような運用体制を取るのかを見ていきたいと思います。県議会で報告されたものによると、タスクフォースを組んで道路状況に詳しいドローンの操縦免許を有した県職員1人と、事前のルート登録を行ったコンサルなどから2人で、全員が免許を持っている3人による体制で運用を行うとしています。福井県では令和5年(2023年)度にドローンの配備、事前の航路登録、災害時の状況把握の実施を行い、令和6年(2024年)度も災害時の状況把握を継続実施するとしています。また、県議会で福井県の次期国土強靱化地域計画について令和5年(2023年)6月の第427回定例会で、藤丸伸和未来創造部長が「令和3年(2021年)1月の大雪ですとか昨年8月の大雨災害などから得られた教訓、それから、コロナ禍における避難所運営の知見、災害用ドローンの配備等のデジタル技術を活用した防災対策など、昨今の社会情勢の変化に合わせて対策を拡充したい」と述べており、継続的にドローンを活用することを検討しているのが分かります。


まとめ

 近年、豪雨や台風などによる災害が頻発する中、地方自治体は強固な防災体制の構築が急務となっています。対応に当たる職員らの被災リスクを軽減することもできる自動飛行機能を有したドローンの導入は、今後も自治体による防災体制構築のトレンドとなることが考えられるでしょう。


 グローカル社では、自治体の情報を横断して一括検索できるツール「G-Finder」を活用したトレンドを見逃さない調査サービス「G-Finderレポート」を提供しています。自治体に関する調査や、自治体への提案・入札参加をご検討の方はお気軽にお問い合わせください。


執筆者 グローカル編集部

地方創生コンサルティング、SaaS/レポートサービスを通して地域活性化を支援する、グローカル株式会社の編集部。地域活性化を目指す事例や自治体・地域企業/中小企業のDX化に向けた取り組み、国の交付金・補助金の活用例を調査・研究し、ジャーナルを執筆しています。

グローカルは、国内全体・海外に展開する地方発の事業をつくり、自立的・持続的に成長する地域経済づくりに貢献します。





出典:

<福井県HP:福井県議会 令和5年土木警察常任委員会及び予算決算特別委員会土木警察分科会 本文 2023-02-22>

<福井県HP:福井県議会 令和5年第427回定例会(第2号 代表質問) 本文 2023-06-28>

<福井県HP:福井県DX推進プログラムver.3.0>

<福井県HP:令和5年度当初予算(令和4年度2月補正予算を含む)>

<内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局・内閣府地方創生推進事務局HP:デジタル田園都市国家構想交付金(デジタル実装タイプ)交付対象事業の概要 分野・都道府県別(令和4年度第2次補正予算) 福井県>

最新記事

すべて表示

こども家庭庁主催「もっと便利に!こども・子育てDX見本市(2024年12月20日~21日)」にG-techナビを出展します

グローカル社がご提供している官公庁専用ICT導入支援サイトの「G-techナビ(ジーテックナビ)」を、こども家庭庁が主催する「もっと便利に!こども・子育てDX見本市」に出展させて頂くことになりましたのでご案内いたします。 <開催概要>...

G-Finder(ジーファインダー)が地方創生SDGs官民連携プラットフォームにソリューションとして掲載

グローカル社がご提供している日本最大級の自治体情報データベースである地方創生SaaSの「G-Finder(ジーファインダー)」が、地方創生SDGs官民連携プラットフォーム(内閣府 地方創生推進事務局)のWebサイトにソリューションとして、2024年10月16日に掲載されまし...

地方創生SDGs官民連携プラットフォーム(内閣府 地方創生推進事務局)の加盟団体となりました。

グローカル株式会社が、SDGsの国内実施を促進し、より一層の地方創生につなげることを目的に、広範なステークホルダーとのパートナーシップを深める官民連携の場として行われている「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム(内閣府 地方創生推進事務局)」の加盟団体となりました。...

bottom of page