はじめに
令和3年(2021年)10月に岸田内閣が発足して、間もなく2年の時が経とうとしています。岸田内閣の提唱する「新しい資本主義」の実現に向けて、デジタル技術の活用を通じて、地域ごとの個性を生かしながら地方独特の社会課題の解決や地域の魅力を向上して地方創生を目指す「デジタル田園都市国家構想」がスタートしてからも時間が経過し、「デジタル田園都市国家構想交付金」を活用した事業が形になった自治体も現れています。本ジャーナルでも、神奈川県箱根町の事例を紹介してきました。今回は神奈川県逗子市の交付金を使った事業について見ていきたいと思います。
逗子市の取り組み
逗子市は神奈川県の南東部に突き出た三浦半島の西側の付け根に位置する自治体で、JR横須賀線や京急逗子線が通り横浜市や東京都心へのアクセスも容易なことからベッドタウンとして人気のある都市です。また西側には相模湾が広がり、海水浴場として有名な逗子海岸(逗子海水浴場)が立地し、海水浴シーズンには関東近郊だけでなく全国から観光客が訪れることで知られています。
この逗子海水浴場は、2019年(令和元年)度の開設時には7月から8月の2ヶ月の間で30万人を超える人々が利用するなど混雑する中で、海岸周辺だけでなく、海岸周辺の住宅街、駅から海岸までの経路までも混雑するというような事態に陥ってしまっていました。また、新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、利用者が密集を避けて快適に過ごせるような対応が求められることに加え、目視での人数計測方法に代わる円滑なオペレーションを実施しなければならないことが課題となっていました。そこで逗子市はセーフィー株式会社と共同で、海水浴場を防犯カメラ(クラウドカメラ)と映像分析AIセンサーを使って、⼈流データを計測・分析して混雑状況を可視化する「海⽔浴場防犯カメラ・AI⼈流把握事業」を令和4年(2022年)から開始しました。
この取り組みは、まず防犯カメラを設置して混雑状況の映像を撮影。その映像を活⽤してAIが⼈流を把握して混雑状況の管理をするというものです。カメラという特性上、設置位置から動くことが出来ませんが、混雑時でも⽬視と同じレベルの精度での利⽤状況を把握でき、24時間体制で海⽔浴場の遊泳区域内の混雑状況をリアルタイムかつ定量的に把握できるようになります。また映像を分析することで、遊泳区域内全体において訪問者数を時間帯別・エリア別の傾向を把握することも可能になり、導入以降の人流の管理に役立てることができます。令和5年(2023年)もデジタル田園都市国家構想交付金を活用して、継続して事業に取り組んでいます。
逗子市は令和5年(2023年)度の「海水浴場運営事業」として31,888千円を計上しています。この内、海⽔浴場防犯カメラ・AI⼈流把握事業として2,428千円がデジタル田園都市国家構想交付金として採択を受けた分になっています。
まとめ
地域の魅力を保ちつつ、新たな価値を創造し、地域経済の活性化や住民の生活の質の向上を図るデジタル田園都市国家構想は、地方自治体が地域活性化や地方創生を目指す取り組みの柱となっています。逗子市のように、デジタル技術を生かして地域資源をさらにブラッシュアップする取り組みが今後も数多く現れることが期待されます。
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執筆者 グローカル編集部
地方創生コンサルティング、SaaS/レポートサービスを通して地域活性化を支援する、グローカル株式会社の編集部。地域活性化を目指す事例や自治体・地域企業/中小企業のDX化に向けた取り組み、国の交付金・補助金の活用例を調査・研究し、ジャーナルを執筆しています。
グローカルは、国内全体・海外に展開する地方発の事業をつくり、自立的・持続的に成長する地域経済づくりに貢献します。
出典:
<内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局・内閣府地方創生推進事務局HP:交付対象事業の概要 分野・都道府県別(令和4年度第2次補正予算)神奈川県>
<セーフィー株式会社HP:セーフィー、逗子市と協働して海水浴場の開設期間に防犯対策と感染防止を実現>
<逗子市HP:セーフィー株式会社と協働で逗子海水浴場における混雑状況の把握に取り組みます>
<逗子市HP:逗子海水浴場は防犯カメラを設置します>
<逗子市HP:令和5年度逗子市当初予算案の概要>
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