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デジタル田園都市国家構想交付金の活用事例―愛知県安城市



はじめに


 岸田政権肝いりの政策として進められている「デジタル田園都市国家構想」。AI(人工知能)やIoTなどのデジタル技術を活用して、地域それぞれの魅力を維持しながら利便性や住民サービスの向上を目指すこの取り組みに基づいて、全国各地の地方自治体で様々な事業が進められています。本ジャーナルでも、神奈川県箱根町の救急通報にスマートフォンのカメラを使って状況把握に役立てる取り組み長野県松本市のAIを使ったオンデマンド交通事業岐阜県羽島市のメタバース(仮想現実)を使った不登校児童・生徒向けの居場所づくりなど、日本全国の地方自治体でユニークな試みが行われている最中です。今回は愛知県安城市の窓口DXについて見ていきたいと思います。



安城市の取り組み


 安城市は名古屋市の南東約30kmに位置する自治体で、令和5年(2023年)8月の時点で約186,000人の人口を有しています。名古屋市に近く、豊田市にも隣接する立地柄から両市の衛星都市となっており、自動車工業をはじめとする機械工業が盛んな地域です。愛知県で13番目に市制に移行した都市で、毎年8月に行われる「安城七夕まつり」で知られています。


 安城市では令和3年(2021年)5月に、新型コロナウイルスの感染拡大への対応や総務省の「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」の策定など国のデジタル化に対する方針などの状況を踏まえ、ICT の進展や国の制度改正などの動きに的確に対応し、ICT を戦略的に活用していくため安城市のDX推進に向けた方針およびこれに関連する個別施策をとりまとめた「安城市DX推進計画」を策定。この安城市DX推進計画の中で、窓口DXについて「窓口での各種手続は、年度末や新年度の転入・転出の増加など受付件数の偏りにより、窓口に混雑が発生しています。市民サービスの向上を図るため、申請手続に係る業務フローの見直し、マイナンバーカードを利用した申請書の自動作成などの検討を行います」と明記しています。


 今回、安城市はデジタル田園都市国家構想交付金を活用して「窓⼝DX推進事業」に乗り出しました。具体的な取り組み内容を見ていきたいと思います。安城市は4つの事業に取り組むとしており、まず一つ目が「総合窓⼝システム」の導入です。現在、安城市では株式会社グラファーの「Graffer スマート申請」を既に導入しており、これまで役所に行かなければならなかった行政手続きを家に居ながら、スマートフォンを通じて簡単に済ませられるようになっています。今度の事業ではマイナンバーカードを利⽤することで、申請時の記⼊が不要になる「書かない窓⼝」を実現するシステムを新たに導入するとしており、サービスの導入と併せてマイナンバーカードのメリットや利活用の場面について分かりやすく広報・啓発を行い、書かない窓口の利用を進めることで市民の利便性の向上につなげることも狙っています。次の二つ目が「遠隔(リモート)相談システム」です。安城市役所の本庁舎と北部・桜井・明祥の3支所をオンラインでつなぐことで、本庁の窓口と同じように相談などを行える仕組みです。三つ目が「AI相談パートナー」です。このシステムは相談記録などの⾃動テキスト化や継ぎ⽬のないサポートを可能にするもので、以前ご紹介した東京都江戸川区の児童相談所の事例のような形になります。最後の四つ目は「コンビニ交付システム」で、これまで安城市が取り組んできたものの拡充事業となります。今回の事業ではマイナンバーカードを活⽤して、税証明などのコンビニ交付対応を新たに可能にするとのことです。


 安城市では、窓⼝DX推進事業にデジタル田園都市国家構想交付金から39,984千円分の採択を受けています。安城市の令和5年(2023年)度の予算でも、「書かない窓口システム導入委託」に9,674千円、「リモート窓口導入委託」に8,459千円を計上しています。



まとめ


 安城市では令和3年(2021年)5月に安城市DX推進計画を策定し、将来的なマイナンバーカードを活用した窓口手続きの簡便化の方針について示唆をしていました。自治体からの案件獲得を狙う際には、このような自治体から発せられるメッセージを見逃さないことが重要なのではないでしょうか。


 グローカル社では、自治体の情報を横断して一括検索できるツール「G-Finder」を活用したトレンドを見逃さない調査サービス「G-Finderレポート」を提供しています。自治体に関する調査や、自治体への提案・入札参加をご検討の方はお気軽にお問い合わせください。



執筆者 グローカル編集部

地方創生コンサルティング、SaaS/レポートサービスを通して地域活性化を支援する、グローカル株式会社の編集部。地域活性化を目指す事例や自治体・地域企業/中小企業のDX化に向けた取り組み、国の交付金・補助金の活用例を調査・研究し、ジャーナルを執筆しています。

グローカルは、国内全体・海外に展開する地方発の事業をつくり、自立的・持続的に成長する地域経済づくりに貢献します。





出典:

安城市HP:安城市DX推進計画

株式会社グラファー:愛知県安城市が「Graffer スマート申請」を導入

安城市HP:令和5年度当初予算 主要事業概要

安城市HP:安城市 令和5年3月 定例会(第1回) 03月02日-02号

内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局・内閣府地方創生推進事務局HP:デジタル田園都市国家構想交付金交付対象事業の概要 愛知県

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