top of page

デジタル田園都市国家構想交付金の活用事例―岐阜県羽島市



はじめに

 本ジャーナルでも、シリーズとして集中的に取り上げている「デジタル田園都市国家構想」。現在進行形で、全国各地の地方自治体が「デジタル田園都市国家構想交付金」を活用した事業に取り組んでいます。石川県小松市の小松駅と小松空港を結ぶ自動運転バスの実証など、幅広いジャンルの取り組みが行われています。今回は岐阜県羽島市から、デジタル田園都市国家構想交付金の活用事例について見ていきたいと思います。


羽島市の取り組み

 羽島市は岐阜県南西部の濃尾平野に位置する自治体で、人口は令和5年(2023年)8月時点で岐阜県内では9番目の多さとなる約64,000人です。市内には岐阜県内唯一の新幹線駅である東海道新幹線の岐阜羽島駅や名神高速道路の岐阜羽島インターチェンジ(IC)が立地する交通の便の良さから岐阜県の玄関口として知られています。農業も盛んに行われている地域でもあり、岐阜県の独自の品種であるハツシモを代表とする稲作のほか、カキやイチゴなどの栽培が行われています。


 この羽島市では、精神や身体、情緒などの問題から学校に登校したくても登校できなくなってしまった児童生徒向けに、現在通っている学校に籍を置いたまま通うことのできる「適応指導教室こだま」を設置しています。羽島市教育支援センター内に設けられ、様々な経験を積んで自信をつけてもらい、最終的には社会的な自立や学校への復帰を目指してもらう施設です。羽島市はデジタル田園都市国家構想交付金を活用して、こだまの機能を仮想空間(メタバース)上に拡張する「仮想空間を活⽤した適応指導教室の整備」事業を開始しました。


 この事業では、メタバース上に生活・学習支援の環境を整備することで、学校や現在のこだまに通うことが出来ない児童生徒の居場所をつくり、社会的な自立に向けた支援をすることを目的としたものです。羽島市内に全13カ所ある小・中学校、義務教育学校内にパソコンなどの機器類を整備し、市内の不登校児童⽣徒がアクセスできるメタバース教室 の開室を目指します。メタバースプラットフォームは、個別相談や学習⽀援の実施には富士ソフト株式会社が提供している、双方向性のあるコミュニケーションを取れることが特徴の教育メタバースシステム「FAMcampus」を、イベントや⾏事の実施にはバーチャルリアリティー(VR)により臨場感のある音楽ライブや発表会などが可能になるクラスター株式会社が開発・運営している「cluster」を使用するという形で、特徴の異なる2つのプラットフォームを用途ごとに使い分ける方針です。また、メタバース上の教室において、児童生徒の学習や交流活動が円滑に実施できるようにICT教育相談⽀援員を配置する予定としています。


 羽島市ではデジタル田園都市国家構想交付金に10,897千円分の採択を受けています。羽島市議会で、その内訳の一部が説明されており、「需用費の84千円はデジタル教材やZoom(ズーム)のライセンス料として、使用料および賃借料の726千円はメタバースのプラットフォームの利用料として、備品購入費の4,310千円はパソコン及び周辺機器の整備に活用し、仮想空間の環境を整えてまいります。」との答弁がされています。


まとめ

 メタバースは近年自治体から熱い視線が注がれており、東京都町田市鳥取県なども活用の動きを見せています。羽島市の事例のように、不登校児童生徒の居場所づくりとしてメタバースを導入する事例が今後のトレンドとなる可能性が考えられるでしょう。


 グローカル社では、自治体の情報を横断して一括検索できるツール「G-Finder」を活用したトレンドを見逃さない調査サービス「G-Finderレポート」を提供しています。自治体に関する調査や、自治体への提案・入札参加をご検討の方はお気軽にお問い合わせください。


執筆者 グローカル編集部

地方創生コンサルティング、SaaS/レポートサービスを通して地域活性化を支援する、グローカル株式会社の編集部。地域活性化を目指す事例や自治体・地域企業/中小企業のDX化に向けた取り組み、国の交付金・補助金の活用例を調査・研究し、ジャーナルを執筆しています。

グローカルは、国内全体・海外に展開する地方発の事業をつくり、自立的・持続的に成長する地域経済づくりに貢献します。





出典:

<羽島市教育委員会学校教育課HP:適応指導教室こだま>

<富士ソフト株式会社HP:みんなを感じられる教育メタバース | FAMcampus>

<クラスター株式会社HP:メタバースプラットフォームcluster(クラスター)>

<羽島市HP:羽島市議会議事録 羽島市 令和5年5月臨時会(第2回) 05月12日-01号>

<内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局・内閣府地方創生推進事務局HP:デジタル田園都市国家構想交付金(デジタル実装タイプ)交付対象事業の概要 分野・都道府県別(令和4年度第2次補正予算) 岐阜県>

最新記事

すべて表示

観光・産業振興のためのeスポーツの推進ー神奈川県小田原市の取組

はじめに eスポーツ(electric sports)は、世界的に注目を集めています。近年、日本国内でも流行の兆しが見えてきており、日本のコンテンツ市場においても今後の成長産業として考えられ、様々な周辺産業への経済効果が期待されています。成長分野であるeスポーツに、小田原市として年齢・性別・障がいの有無に関係なく多くの人が楽しめるeスポーツに着目し、eスポーツを観光コンテンツとして様々な事業に取り

eスポーツでいい里づくり事業ー熊本県美里町の取組事例

はじめに 近年、eスポーツは地方自治体に、子どもから高齢者まで幅広い世代に向けた健康増進や就労支援等の領域で導入が進んでいます。eスポーツとは、「エレクトリック・スポーツ」の略で、主にコンピューターゲームやビデオゲームを使った大戦をスポーツ競技としてとらえる際の名称となっています。ゲームの特性上、年齢や性別、国籍、障害の有無に関わらず、誰もが参加できるのが特徴です。これまで本ジャーナルでも、地方自

神奈川県の子育て情報がLINEに一元化ー神奈川県の取組事例

はじめに 全国の地方自治体では、少子高齢化や人口減少の社会課題解決のための施策として、子育て支援に注力しています。子育て世代は、若い頃からスマホや携帯電話、PCに慣れ親しんでいる世代となっているため、高齢者世代に比べ自治体DXの施策は効果を発揮させていきやすいと言われています。今回紹介する神奈川県の事例は、県内在住者向けの子育て支援情報を「かながわ子育てパーソナルサポート」というLINEサービスで

Komentáře


bottom of page