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デジタル田園都市国家構想交付金の活用事例―石川県小松市



はじめに

 東京への一極集中を解消して地方の人口減少を食い止め、日本社会全体の活力を上げることを目的とした「地方創生」。平成26年(2016年)に発足した第2次安倍改造内閣が打ち出したこの言葉は今では深く日本社会に根付き、多くの地方自治体で地方創生に向けた取り組みが行われてきました。この流れは現在の岸田内閣にも受け継がれ、地域の豊かさを維持しながら、都市部と同様あるいは独自の利便性と魅力を備えた、新たな地域づくり「デジタル田園都市国家構想」に基づく施策が全国各地で実施されています。「デジタル田園都市国家構想交付金」を活用した、神奈川県箱根町の消防通報をスムーズにするシステムの導入神奈川県逗子市の防犯カメラを活用した人流把握などの事例を紹介してきました。今回は石川県小松市の取り組みに焦点を当てていきたいと思います。


小松市の取り組み

 小松市は石川県南部の自治体で、令和5年(2023年)7月末時点で石川県内第三位の約106,000人の人口を誇っています。建設機械メーカーの国内最大手である株式会社小松製作所の企業城下町として知られ、市内には関連企業や工場も多く立地している工業都市として知られています。

 この小松市では令和6年(2024年)3月に北陸新幹線の小松駅の開業が控えており、市内には既に空の玄関口である小松空港が立地していることから北陸地方でも屈指の交通の結節点となる予定です。しかし、小松駅と小松空港は車で12分ほどの距離にあり、現在もバスが運行していますが新幹線の開業でより利用者が増加する見込みです。そこで、移動環境向上やまちなかへの⼈流拡⼤による地域発展が求められ、バス運転⼿不⾜への対応も迫られていました。そこで小松市がデジタル田園都市国家構想交付金を活用して取り組んでいるのが、「⼩松市における2⼤交通拠点をつなぐ⾃動運転バスの導⼊事業」です。

 この事業は⾼精度の3次元地図データとレーザー光を照射して反射光の情報から対象物までの距離や対象物の形などを計測する技術であるLiDARを活用。車線を維持しながら前のクルマに付いて走るなど、比較的簡単な特定条件下での自動運転機能であるレベル2または遅いクルマがいれば自動で追い越したり、高速道路の分合流を自動で行ったりすることを可能にするなど、より高機能な能力が求められる特定条件下での自動運転を行うレベル3での自動運転を実現する「⾃動運転システム」、遠隔からダイヤに沿った⾛⾏の指⽰や速度、車両の状態、車内外の映像を監視できる「遠隔監視システム」、交通系ICカードに対応した「キャッシュレス決済システム」を三本柱に、⾃動運転の路線バスとしての定常運⾏の実現を目指すものです。


 小松市では令和4年(2022年)8月にBOLDLY株式会社、株式会社ティアフォー、アイサンテクノロジー株式会社、損害保険ジャパン株式会社の4社と「小松市における2大交通拠点をつなぐ自動運転バスの導入に向けた連携協定」を締結。令和5年(2023年)3月には試験走行の実証実験を行いました。小松市議会では実証実験から得られた成果として、部分的に自動運転を行うレベル2による走行を実施し、最終段階での自動運転走行の割合は68.8%に達し、遠隔監視システムの安定接続やルートの適切性も確認されたと報告されています。一方で検証事項として、低速の試験用車両を使用したため周辺車両との速度差が大きく、より速度の出る車両での検証が必要とされていること、積雪や荒天時など様々な環境下での自動運転走行も想定した運行設計が必要となることを挙げています。今後は最高時速40キロの性能を有する車両での約6か月間の長期的な試験走行、運行事業者の教育訓練、運行ダイヤの設定や車両へのワンマン機器の設置などに取り組むとしています。


 小松市は令和5年(2023年)予算に「小松駅・空港間自動運転バス運行費」として、133,500千円が計上されており、デジタル田園都市国家構想交付金には132,924千円分の採択を受けています。


まとめ

 自動運転は、高齢化によって交通弱者が増加する日本社会においてニーズが高まっている技術になっています。今後、デジタル田園都市国家構想交付金の公募が新たに行われた際には、小松市のように自動運転の採択を目指す自治体が多く現れるでしょう。


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執筆者 グローカル編集部

地方創生コンサルティング、SaaS/レポートサービスを通して地域活性化を支援する、グローカル株式会社の編集部。地域活性化を目指す事例や自治体・地域企業/中小企業のDX化に向けた取り組み、国の交付金・補助金の活用例を調査・研究し、ジャーナルを執筆しています。

グローカルは、国内全体・海外に展開する地方発の事業をつくり、自立的・持続的に成長する地域経済づくりに貢献します。





出典:

<小松市HP:自動運転バス導入に向けた連携協定締結>

<小松市HP:自動運転バスの走行試験・実証実験について>

<小松市HP:小松市議会 令和5年第3回定例会(第3日目)本文 2023-06-21>

<小松市HP:令和5年度当初予算 主な施策の概要>

<内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局・内閣府地方創生推進事務局HP:デジタル田園都市国家構想交付金(デジタル実装タイプ)交付対象事業の概要 分野・都道府県別(令和4年度第2次補正予算)石川県>

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