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音声マイニングで児童相談所の業務効率化!東京都江戸川区の事例

更新日:11月17日

はじめに

 近年、デジタル技術の進化により、社会のあり方が大きく変わりつつあります。官民を問わず、デジタルトランスフォーメーション(DX化)の波が押し寄せており、デジタル技術を活用した業務変革が必要とされています。このコラムでは、これまで福島県福島市の事例埼玉県川口市の事例など、地方自治体のDX事例を紹介してきました。これまでの事例は、AIを使った光学文字認識機能AI-OCRを活用して書類情報をデータ化する際のスピードアップや定型化している業務をソフトウェアロボットで自動化するRPAに任せることにより作業効率を向上させるなどの内容でしたが、今回は東京都江戸川区の児童相談所でのDX事例について見ていきます。通報などの相談対応や一時保護など定型化しにくい業務が多そうな児童相談所で、どのようにDX化を進め、業務効率化を図ったのかについて探ってみたいと思います。


江戸川区の児童相談所でのDX化に向けた取り組み

 江戸川区では令和2年(2020)年4月に児童相談所「はあとポート」を開所。保護業務などを独自に行えるようになった一方、児童相談所に来る電話対応が非常に重荷になっていました。児童相談所全体で1日当たり約300本の入電があり、担当課では電話対応に追われて80人ほどの職員がいましたが1月あたりの部署全体の平均残業時間が2,000時間に及ぶなど非常に負担がかかっている状態になっていました。


 そこで江戸川区が導入したのがNTTテクノクロス株式会社で提供しているサービス「ForeSight Voice Mining(フォーサイト ボイス マイニング)」です。このサービスは「通話音声分析・モニタリングシステム」と呼ばれるもので、通話音声をリアルタイムにテキスト化することにより、通話者以外の者も即座に内容を共有できるようになっています。このシステムは音声マイニングと呼ばれるツールを活用したもので、蓄積されたデータからAIが分析して通話の発言を文脈に適した単語へと変換。通話内容に応じて参照すべきマニュアルなどを通話者の画面上に示すことができる点が特徴です。このサービスを導入したことで、相談者により的確な案内ができるようになったとともに、緊急対応が必要な事案には即座に組織的な対応へと移行することが可能になりました。さらに電話対応が終了した後には、自動で通話内容の要約が作成され、書類作成などの従来時間を要していた業務の大幅な効率化が実現しました。

 江戸川区では令和3年(2021年)度予算に「AIを活用した児童相談業務の効率化」事業として3か年事業で予算を付けて取り組みを開始。この年の8月からForeSight Voice Miningの機能性や操作性などを検証する試行運用を行い、令和4年(2022年)に本格稼働を開始。現在では通話対応にあたる全職員分の約100台の機器を導入して相談業務に当たっています。


まとめ

 江戸川区の例から、一見DX化による恩恵を得るのが難しそうな電話対応業務にも最新技術を活用することで業務効率化ができることが分かります。新型コロナウイルスのワクチン接種予約などに関して電話対応窓口を設けた自治体も多く、デジタル化が進行しても幅広い年代が利用できる電話窓口への市民ニーズは一定程度残り続けることが考えられます。この電話窓口対応の負担を軽減していくことは、地方自治体による業務効率化のトレンドとなる可能性があると言えるでしょう。


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出典:

<江戸川区HP:令和3年予算特別委員会(第5日)-03月04日-05号>

<江戸川区HP:令和3年12月 新庁舎建設等検討特別委員会-12月14日-03号>

<NTTテクノクロス株式会社HP:電話内容を音声認識・分析し、業務支援を図るべく、2022年1月より本格運用開始江戸川区児童相談所にコールセンターAIソリューションを導入~相談員の業務効率化を支援し、虐待の早期発見や迅速対応の実現へ~>

<江戸川区HP:令和3年度予算編成について>

<江戸川区HP:2021年(令和3年)9月3日 通話音声分析・モニタリングシステムの運用を区児童相談所で試行的に開始>

<総務省HP:児童相談業務にAIを活用し相談業務の強化と関連業務の効率化 【東京都江戸川区】>



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