top of page

デジタル田園都市国家構想交付金の活用事例―愛知県田原市



はじめに


 岸田政権が地方創生を目指して打ち出した「デジタル田園都市国家構想」。この構想は、AI(人工知能)やIoT、ドローン(無人航空機)などのデジタル技術を活用して、地域ごとの魅力を損なわないようにしながら利便性や住民サービスの向上を目指すものです。「デジタル田園都市国家構想交付金」制度も新たに設けられ、全国各地の地方自治体で取り組みが進められています。石川県津幡町のAIを活用したデマンド交通の実装岐阜県恵那市のスマートスピーカーを使った高齢者の見守り事業愛知県豊橋市のICTを活⽤した糖尿病を予防する取り組みなど、様々な事業が行われている最中です。今回は愛知県田原市の保育園・児童クラブICTシステムの導⼊について見ていきたいと思います。



田原市の取り組み


 田原市は愛知県の南端に位置する自治体で、渥美半島のほぼ全域を市域として占めています。令和5年(2023年)9月の時点で、約57,000人の人口を有しています。三河湾国定公園、渥美半島県立自然公園に指定されるなど、海と山々に囲まれた美しい自然環境が特徴の自治体となっており、その中でも蔵王山、伊良湖岬、大石海岸は全国から大勢の観光客が訪れる観光スポットとなっています。また、近海を流れる黒潮の影響で一年を通して温暖なことから農業が非常に盛んな地域です。キャベツ、白菜、ブロッコリーなどの産地として知られています。


 この田原市では、デジタル田園都市国家構想交付金を活用して「保育園・児童クラブICTシステム導⼊業務」を開始しました。田原市は令和4年(2022年)に田原市がデジタル社会を構築するために必要な方針をとりまとめる「田原市デジタル社会形成方針」を策定。この中で、推進施策として「令和3年(2021年)度より公的病院(渥美病院)における電子カルテ導入支援を行っており、また保育園・児童クラブで出欠管理や情報共有を行うシステムを試験導入します。」と取り組み状況が記載されており、今後の方向性として「市内医療機関への電子カルテ導入の拡大及び情報連携システムの構築による医療サービスの向上及び保育園・児童クラブでの試験導入の検証を基にシステム導入施設の拡大を検討します。」との方針が示されています。


 続いて、具体的な取り組み内容を見ていきます。今回の事業で田原市は、保護者の利便性の向上や業務の効率化、保護者の利便性の向上を目的に公⽴保育園14園、公⽴児童クラブ17クラブへICTシステムを導入します。システムの内容に目を向けてみると、保育園・児童クラブ共通の機能として園児・児童の情報管理や登降園・⼊退室の管理、緊急時やこれまでお便りや連絡帳を使ってやり取りをしていたものをシステム上から行えるほか、アプリケーション上から⽋席連絡が可能になると説明されています。また、保育園のみの機能として出席簿、保育指導案などの各種帳票作成や連絡帳作成、園児情報の共有ができ、児童クラブのみの機能として本部と即⽇の情報共有ができる⽇誌作成機能などを保有するとしています。


 今回、田原市は保育園・児童クラブICTシステム導⼊業務にデジタル田園都市国家構想交付金から51,804千円分の採択を受けています。また、令和5年(2023年)度予算に「保育園・児童クラブICTシステムの導入」として137,376千円を計上。内訳は公立保育園分が94,036千円、児童クラブが43,340千円となっています。令和5年(2023年)5月から「児童クラブICTシステム導入および運用保守業務公募型プロポーザル」が行われ、NTTビジネスソリューションズ株式会社が優先交渉権者として選定されています。予算資料によると、令和5年(2023年)の10月から稼働予定とされており、導入後の効果に注目が集まりそうです。



まとめ


 田原市は田原市デジタル社会形成方針から、令和3年(2021年)ごろから保育園・児童クラブICTシステムの導入を検討してきたことが読み取れ、デジタル田園都市国家構想交付金を活用して形になった可能性が伺えます。自治体の「計画・方針」などから自治体の施策の方向性を読み取ることが、自治体からの案件を獲得する際には重要となってくるのではないでしょうか。


 グローカル社では、自治体の情報を横断して一括検索できるツール「G-Finder」を活用したトレンドを見逃さない調査サービス「G-Finderレポート」を提供しています。自治体に関する調査や、自治体への提案・入札参加をご検討の方はお気軽にお問い合わせください。



執筆者 グローカル編集部

地方創生コンサルティング、SaaS/レポートサービスを通して地域活性化を支援する、グローカル株式会社の編集部。地域活性化を目指す事例や自治体・地域企業/中小企業のDX化に向けた取り組み、国の交付金・補助金の活用例を調査・研究し、ジャーナルを執筆しています。

グローカルは、国内全体・海外に展開する地方発の事業をつくり、自立的・持続的に成長する地域経済づくりに貢献します。






出典:

田原市HP:田原市デジタル社会形成方針

田原市HP:令和5年度予算 主要施策の事業概要

田原市HP:田原市保育園、児童クラブICTシステム導入および運用保守業務公募型プロポーザルの結果について

内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局・内閣府地方創生推進事務局HP:デジタル田園都市国家構想交付金交付対象事業の概要 愛知県


最新記事

すべて表示

観光・産業振興のためのeスポーツの推進ー神奈川県小田原市の取組

はじめに eスポーツ(electric sports)は、世界的に注目を集めています。近年、日本国内でも流行の兆しが見えてきており、日本のコンテンツ市場においても今後の成長産業として考えられ、様々な周辺産業への経済効果が期待されています。成長分野であるeスポーツに、小田原市として年齢・性別・障がいの有無に関係なく多くの人が楽しめるeスポーツに着目し、eスポーツを観光コンテンツとして様々な事業に取り

eスポーツでいい里づくり事業ー熊本県美里町の取組事例

はじめに 近年、eスポーツは地方自治体に、子どもから高齢者まで幅広い世代に向けた健康増進や就労支援等の領域で導入が進んでいます。eスポーツとは、「エレクトリック・スポーツ」の略で、主にコンピューターゲームやビデオゲームを使った大戦をスポーツ競技としてとらえる際の名称となっています。ゲームの特性上、年齢や性別、国籍、障害の有無に関わらず、誰もが参加できるのが特徴です。これまで本ジャーナルでも、地方自

神奈川県の子育て情報がLINEに一元化ー神奈川県の取組事例

はじめに 全国の地方自治体では、少子高齢化や人口減少の社会課題解決のための施策として、子育て支援に注力しています。子育て世代は、若い頃からスマホや携帯電話、PCに慣れ親しんでいる世代となっているため、高齢者世代に比べ自治体DXの施策は効果を発揮させていきやすいと言われています。今回紹介する神奈川県の事例は、県内在住者向けの子育て支援情報を「かながわ子育てパーソナルサポート」というLINEサービスで

Comments


bottom of page