top of page

デジタル田園都市国家構想交付金の活用事例―兵庫県神戸市



はじめに


 AI(人工知能)やIoT、ドローン(無人航空機)などの最新のデジタル技術を活用することで、地域それぞれの魅力を損なわないようにしながら利便性や住民サービスの向上を目指す「デジタル田園都市国家構想」。この構想を実現するため「デジタル田園都市国家構想交付金」制度も創設され、全国の地方自治体で様々な取り組みが進められている最中です。本ジャーナルでもこれらの取り組みを特集しており、石川県津幡町のAIを使ったオンデマンド交通の実装岐阜県羽島市のメタバース(仮想現実)を活用した不登校になってしまった児童生徒向けの居場所づくり愛知県蒲郡市の市民の健康づくりを促進する独自のポイントプラットフォームの立ち上げなど、全国の地方自治体の多彩な取り組みの数々を紹介してきました。今回は兵庫県神戸市のLINE(ライン)を活用した通報サービスの導入について見ていきたいと思います。



神戸市の取り組み


 神戸市は言わずと知れた兵庫県の県庁所在地で、令和5年(2023年)10月の時点で兵庫県内の市町村で最多となる約1,499,000人の人口を誇る、日本国内でも指折りの大都市として知られています。古くから港町として栄えてきた歴史がある都市で、江戸時代には日米修好通商条約の締結に端を発して欧米列強諸国向けの港として開港されたことで有名です。また江戸時代に外国人居留地として整備され、北野町山本通に代表される異国情緒溢れる街並みなどを目当てに多くの観光客が訪れる観光都市としての一面も備えています。


 この神戸市ではデジタル田園都市国家構想交付金を活用して「市有施設の不具合に関する投稿『LINE版KOBEぽすと』の導⼊」事業に乗り出しました。神戸市では「KOBEぽすと」と呼ばれる通報システムを導入していました。このシステムは神戸市の管理している道路や公園、街灯などの施設・設備に発生した不具合(例:道路に穴が開いている、街灯がつかなくなっている、ブランコの鎖が外れている)をWeb上から市に通報することができるというものです。


 今回の事業で神戸市はこのKOBEぽすとの機能をSNS(ソーシャルネットワークサービス)であるLINEから利用できるような形に移行するとしています。利用の流れとして市民が不具合のあった施設の状況を撮影して神戸市の公式LINE内に設けられたKOBEぽすとから写真を投稿します。すると、投稿された写真から現場の緯度経度の情報を取得し、速やかな現場確認などに情報を活かすことができます。さらに投稿があったLINEのユーザーIDを記録しておくことが可能で、不具合を通報した市民に対して修繕状況を通知することで、これまで実現していなかった双方向性のあるコミュニケーションが実現します。これらの機能のほかに、従来のKOBEぽすとが有していたごみの分別区分や居住地に応じた排出⽇、⼦育てイベントなどの市政情報をプッシュ型で通知する機能を有しています。


 神戸市はデジタル田園都市国家構想交付金から19,585千円分の採択を受けています。また神戸市は令和5年(2023年)度予算にLINE版KOBEぽすと導入事業を含む「デジタル技術を活用した新たな広聴手段の導入」事業に37,500千円を計上しています。既に11月からLINE版KOBEぽすとの運用が始まっており、それに伴って既存のWeb版でのKOBEぽすとは10月末日で廃止となっています(投稿に対する対応状況の確認のみ11月末日まで対応)。今後、この取り組みが本格稼働していく中でどのような成果が上がるのかに注目が集まります。



まとめ


 人手不足・人材不足が叫ばれる日本社会の中で、市民からの通報・問い合わせ対応は自治体にとって難しい課題となっています。自治体によっては電話での問い合わせ対応をアウトソーシングする自治体もある中、神戸市のようにデジタル技術を生かして市民と双方向コミュニケーションを図る取り組みは市民の安心感の醸成に役立つのではないでしょうか。


 グローカル社では、自治体の情報を横断して一括検索できるツール「G-Finder」を活用したトレンドを見逃さない調査サービス「G-Finderレポート」を提供しています。自治体に関する調査や、自治体への提案・入札参加をご検討の方はお気軽にお問い合わせください。



執筆者 グローカル編集部

地方創生コンサルティング、SaaS/レポートサービスを通して地域活性化を支援する、グローカル株式会社の編集部。地域活性化を目指す事例や自治体・地域企業/中小企業のDX化に向けた取り組み、国の交付金・補助金の活用例を調査・研究し、ジャーナルを執筆しています。

グローカルは、国内全体・海外に展開する地方発の事業をつくり、自立的・持続的に成長する地域経済づくりに貢献します。






出典:

姫路市HP:第2期姫路市官民データ活用推進計画

姫路市HP:令和5年度主要事業の概要

姫路市HP:令和5年第1回定例会-03月06日-04号

内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局・内閣府地方創生推進事務局HP:デジタル田園都市国家構想交付金(デジタル実装タイプ)交付対象事業の概要 分野・都道府県別(令和4年度第2次補正予算)兵庫県

最新記事

すべて表示

自治体のニーズに応える営業とは ~文書調査によるニーズ理解の深化~

「うちの製品やシステムを、自治体へ売りたいのだけど、なかなか・・・」と悩んでいる企業は多いのではないでしょうか。   “やみくもなターゲティング”や“物売り営業”では、受注につながらない。 “戦略的なターゲティング”や、今、それが欲しかったんだよと思われる“ニーズを先取りす...

観光・産業振興のためのeスポーツの推進ー神奈川県小田原市の取組

はじめに eスポーツ(electric sports)は、世界的に注目を集めています。近年、日本国内でも流行の兆しが見えてきており、日本のコンテンツ市場においても今後の成長産業として考えられ、様々な周辺産業への経済効果が期待されています。成長分野であるeスポーツに、小田原市...

eスポーツでいい里づくり事業ー熊本県美里町の取組事例

はじめに 近年、eスポーツは地方自治体に、子どもから高齢者まで幅広い世代に向けた健康増進や就労支援等の領域で導入が進んでいます。eスポーツとは、「エレクトリック・スポーツ」の略で、主にコンピューターゲームやビデオゲームを使った大戦をスポーツ競技としてとらえる際の名称となって...

Comments


bottom of page