はじめに
地方自治体が直面する多様な課題に対応し、地域の魅力を高めて持続的な成長を目指すためには、デジタル技術の活用が欠かせません。また官民を問わず働き方改革が叫ばれる中で、デジタル技術の活用による業務効率化の必要性が高まっています。これを実現するためにデジタルトランスフォーメーション(DX化)に積極的に取り組む地方自治体も現れています。福島県福島市ではAIを使った文字読み取り技術であるAI-OCRとRPAを活用することで、大幅な業務効率化を実現しました。今回はこの福島市でのDX事例について見ていきます。
福島市の事例
福島市では膨大な手書き帳簿の読み取り作業のような大量に処理しなければならない事務処理が、業務効率化を図る上で大きな課題になっていました。職員の業務負荷を減らすために業務委託やバッチ処理を導入していましたが、それでも手作業で進めなくてはいけない作業があり、抜本的な改革が求められていました。同市ではそのためAI-OCRサービスを導入していましたが、手書き帳票の読み取り速度や読み取り精度に課題を感じていました。そこで福島市が新たに導入したのがNTT東日本のAI-OCRサービス「AIよみと~る」でした。同サービスはディープラーニングによるアルゴリズムと歪み・傾きを修正できる機能を保有しており、検出ミスや誤読をしてしまうケースが減りました。
さらに福島市ではRPAの導入も進められています。令和2年(2020年)から令和4年(2022年)までの2年間で介護保険課や障がい福祉課、市民税課、納税課などの6つの課でRPAの導入が進められました。市民税課を一例にして見ていきましょう。年間あたり3万4,755件の処理を行っていた給与支払い報告書関係の業務がありました。この業務では1件につき31秒の処理時間がかかっていたものが、RPAを導入することで1秒に短縮され、処理時間が97%削減される結果となりました。
また同市ではこれまでにRPAを導入した14の業務について5年間での費用対効果を測定しています。14の業務を合わせた削減時間は7,345時間となり、これまで構築にかかった費用1,345万円を削減時間で割ると、削減した時間1時間当たりの構築コストはおよそ1,830円となります。これを職員の平均時給2,020円と比較すると一時間あたり約200円の削減となり、職員の負荷削減だけではなく福島市庁舎全体の費用コスト削減に役立っていることが明らかになっています。
まとめ
地方自治体におけるDX化は、地域の未来を拓くための重要な取り組みです。デジタル技術の進化を活用し、行政サービスの効率化や地域産業の活性化、観光産業の振興など多岐にわたる分野で成果を上げることが期待されます。しかし、福島市のように一旦導入した技術の見直しが迫られる例もあります。現在では先進自治体での取り組みが蓄積されつつあり、後発で取り組む自治体はそのような先行事例を研究することでより効果的にDX化を進めことができるでしょう。グローカル社では、自治体の情報を横断して一括検索できるツール「G-Finder」を活用した調査サービス「G-Finderレポート」を提供しています。自治体に関する調査や自治体への提案、入札参加をご検討の方はお気軽にお問い合わせください。
執筆者 グローカル編集部
地方創生コンサルティング、SaaS/レポートサービスを通して地域活性化を支援する、グローカル株式会社の編集部。地域活性化を目指す事例や自治体・地域企業/中小企業のDX化に向けた取り組み、国の交付金・補助金の活用例を調査・研究し、ジャーナルを執筆しています。
グローカルは、国内全体・海外に展開する地方発の事業をつくり、自立的・持続的に成長する地域経済づくりに貢献します。
出典:
<福島市HP:福島市地域情報化イノベーション計画~デジタル技術によるよりよい市民生活を目指して~>
<福島市HP:市議会議事録令和4年6月定例会議-06月08日-02号>
<NTT東日本HP:行政完全デジタル化までの過渡期を乗り切れ!マイナンバー対応AI-OCRとRPA連携で介護保険業務を効率化>