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住民サービス向上を狙う 埼玉県川口市からみる自治体DX

更新日:11月17日

はじめに

 近年、デジタル技術の進化により、社会のあらゆる分野で革新的な変化が生じています。このデジタル革命の波が押し寄せているのは、地方自治体も例外ではありません。地方自治体におけるデジタルトランスフォーメーション(DX化)は、行政の効率化やサービスの向上を図る上で重要なキーワードとなっています。これまで、このジャーナルでは福島県福島市や広島県広島市を事例に自治体DXの取り組みについて紹介してきました。今回は埼玉県川口市を事例に地方自治体におけるDX化について見ていきたいと思います。


川口市のDX化の取り組み

 川口市は埼玉県の南端に位置し、首都圏から通勤する人たちの言わばベットタウンとして人気を誇っている自治体です。川口市では積極的にDX化の推進を進めており、総合計画である「第5次川口市総合計画」の後期基本計画内では、情報化の推進という項目の中で「AIやRPAなどの先進技術を活用し、業務の効率化を図り、市民サービスの向上に努めます」との記載がされています。


 川口市では平成30年(2018年)にはRPA導入に向けた検討がスタート。その後に実証実験を経て、令和2年(2020年)にNTT東日本の提供するAI-OCRサービス「AIよみと~る」を導入しました。現在ではこのサービスほか、RPAを活用した業務の一部自動化などが導入されています。これらの技術が活用されだしたのは新型コロナウイルスの感染拡大の影響による緊急時対応からでした。令和2年(2020年)5月から始まった「小規模事業者等事業継続緊急支援金」もその一つです。申請が紙ベースで行われていたため、「AIよみと~る」を活用することで、業務効率を向上させることが出来ました。


 その後も利用は拡大しており、現在最も利用されている業務が「ワクチン接種記録システム(VRS)への接種記録の登録業務」になります。約60万人の人口を誇る同市で、多くの人がなおかつ複数回利用する新型コロナウイルスのワクチン接種業務に活用することで大きな業務効率化の効果を得ることが出来ました。具体的な削減時間を見てみると1カ月あたり約40時間となり、年間あたりに換算すると約480時間と試算しています。

 業務効率化を図る上で、DX化だけでなくBPOなど外部委託するなど方法は一つではありません。一方で川口市では、AI-OCRやRPAの内製化を推し進めています。この理由について、コロナ禍以降に各種支援金の給付やワクチン接種などの突如として政策が決まり、早急に対応しなければならない業務が増加している背景を挙げ、外部委託では予算の調整や委託先の検討などに時間がかかってしまうが、内製する場合はスピード感を持って始められることがメリットになるとしています。

まとめ

 地方自治体におけるDX化は、行政の効率化や地域の活性化に大きく寄与する重要な取り組みです。川口市の例より、業務効率化による職員負担の軽減だけでなく、スピード感を持った対応ができるようになることで住民サービスの向上を狙うこともできることが分かりました。これらのことから、自治体でのDXは今後も注目が集まる分野と言えるでしょう。グローカル社では、自治体の情報を横断して一括検索できるツール「G-Finder」を活用したトレンドを見逃さない調査サービス「G-Finderレポート」を提供しています。自治体に関する調査や、自治体への提案・入札参加をご検討の方はお気軽にお問い合わせください。



出典:

<川口市HP:川口市平成30年12月定例会埼玉県川口市議会 12月12日-04号>

<川口市HP:第5次川口市総合計画>

<NTT東日本HP:導入事例>

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