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児童虐待相談の対応におけるDXの取組 -三重県の事例-



はじめに

 こども家庭庁の調査によると児童虐待相談対応件数(令和3年度(2021年))は、全国225か所の児童相談所が児童虐待相談として対応した件数は207,600件となり、これは過去最多とされています。前年度と比較しても、2,616件の増加が見られます。今回取り上げている三重県の最新データでは、令和4年度の県内児童相談所における児童虐待相談対応件数は、2,408件(前年度比+261件、+12.2%)で、過去最多になっています。三重県では、児童虐待の課題解決に向けて、新しい児童虐待対応支援システム「AiCAN」を活用して児童相談所職員の業務効率化や生産性向上を図る取り組みを、令和2年度(2020年)から実施しており、今回はその事例を詳しくみていきます。


児童虐待相談の対応におけるDXの取組 -三重県の事例-

 三重県では令和2年(2020年)6月から「みえデジタル戦略推進計画」を策定し、暮らしのDX (デジタル・トランスフォーメーション)としてデジタルを活用した県民の安心・安全の確保のためにデジタル活用を促進しています。その中で、三重県では全国的に先駆けた児童虐待相談の対応として、全国初のシステムを活用した職員の専門性の向上や業務効率化を推進しています。国立研究開発法人産業技術総合研究所と協力の下で、令和2年(2020年)から県内の児童相談所に児童虐待対応支援システム導入が行われ、職員の業務効率化が促されています。


 例えば、相談現場から相談所への状況説明が難しい児童の外傷の程度や室内の様子を、リアルタイムに写真共有できるようになりました。この取り組みは、厚生労働省によっても評価され、三重県児童相談センターの事例として令和2年(2020年)に取り上げられました。児童虐待対応支援システム導入の効果として、高品質な相談員の判断サポートが可能となり、現場相談員と所長や他の職員との迅速なコミュニケーションが促進される体制が作られました。また、過去の事例に基づき、虐待相談における総合リスク、再発確率、類似ケースなどを迅速に把握できようになりました。今後の課題は、ベテラン職員の知見継承、人材育成における情報共有の仕組みづくり、現場職員の業務分担をデータに即して検討する業務管理、システム導入への費用などが挙げられています。


 また、三重県議会の令和4年(2022年)定例会(第3日 2月17日)では、三重県 一見勝之 知事から児童虐待相談の課題意識について、「子供の命を守り、安全を確保するため、児童相談所や市町における児童虐待対応力の強化を図ることが重要である」と答弁されています。

 類似する取り組みは群馬県高崎市でも行われており、三重県の児童相談所での導入に続き全国で2例目、市区町村レベルでは全国初の取り組みが行われています。令和5年度(2023年)予算として、児童相談所整備事業として709,954千円を計上し、増加する児童虐待事案に対応するため、児童相談所の開設に向けた取り組みが行われています。その一環で、職員が迅速な児童虐待対応をするため、令和5年(2023年)6月からDXを活用した相談支援システムの実証実験が行われています。


 高崎市では、令和7年(2025年)に独自の児童相談所を開設する方針としており、そのための準備として民間事業者の株式会社AiCANと協力して児童虐待対応支援システムを導入しています。以前、職員は児童虐待についての調査内容を緊急受理票など紙の資料にまとめて管理していましたが、児童虐待対応支援システム導入により、職員は部署内での情報共有や外出先からのデータ閲覧が可能になり、業務効率と利便性が大きく向上しました。高崎市議会の令和5年(2023年)3月定例会(第1回)の議事録によると、高崎市こども救援センターへの児童虐待対応件数は右肩上がりの状況となっており、令和3年(2021年)には248件もの通告があったとされています。これにより、相談業務の改善が急務の社会課題として浮き彫りになっています。


まとめ

 三重県と高崎市における児童虐待相談へのDXの活用は、全国的な社会課題である児童虐待に対して、子ども達の将来を希望あるものとするための重要な取り組みとなっています。相談業務を行う職員の業務効率化を図ることで、働き方も改善され、より高品質な相談対応を行えるようになると考えられます。

 このような自治体のトレンドを見逃さないよう、グローカル社では、自治体の情報を横断して一括検索できるツール「G-Finder」を活用した調査サービス「G-Finderレポート」を提供しています。自治体に関する調査や、自治体への提案・入札参加をご検討の方はお気軽にお問い合わせください。



執筆者 平峯 佑志 Yushi Hiramine

スポーツ&ヘルスケア関連の事業会社を創業メンバーとして起業、新規事業立ち上げ/経営企画/WEBマーケティング/法人営業・自治体営業/知的財産管理等の業務に従事。スポーツ専門研究機関のシンクタンクでのPM業務を経てグローカルにジョイン。

グローカルに参画後は、健康管理システムのソリューション営業の型化/営業支援体制の構築支援、自治体向けの情報プラットフォームの営業支援/PM業務、公募調査ツール「G-Finder」の企画開発業務に従事




出典:

<三重県「三重県議会 令和4年(2022年)定例会(第3日2月17日)」>

<三重県「みえデジタル戦略推進計画 令和2年(2020年)6月」>

<三重県「暮らしのDX」>

<三重県「令和4年度の児童虐待相談対応件数」>

<三重県「全国で初めて人工知能(AI)を活用した児童虐待対応支援システムの運用を開始」>

<三重県児童相談センター「人工知能(AI)を活用した児童虐待対応支援システム サービス要求仕様書(案)」>

<こども家庭庁HP:令和3年度 児童相談所での児童虐待相談対応件数>

<厚生労働省「三重県児童相談センターの事例紹介「三重県におけるAIを活用した児童虐待支援システムの導入について」>

<高崎市「令和5年度(2023年)予算書」>

<高崎市「高崎市議会 令和5年(2023年)3月定例会(第1回)」>

<株式会社AiCAN HP>

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