はじめに
近年、デジタルトランスフォーメーション(DX)は企業経営の重要なテーマとして注目を浴びています。DXは従来のビジネスモデルを見直し、最新のデジタル技術などを活用して業務プロセスを改善し、競争力を高める取り組みを指します。特に、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けてビジネスモデルの見直しを迫られた世界中の企業は、オンラインでの事業展開やリモートワークなどの取り組みを加速させています。このような背景の中、地方自治体は地域経済の中枢を担う地元中小企業のDX化を支援することが求められています。地域経済の活性化や地方創生、労働者にとって魅力的な雇用の場の創出だけでなく、日本経済全体の成長を促進することに直結する重要な役割です。本ジャーナルでは、これまでも長野県松本市や岡山県岡山市、沖縄県沖縄市の事例を紹介してきました。今回は広島県福山市の事例について見ていきます。
福山市の取り組み
福山市は広島県東部の備後地域に立地する自治体で、岡山市との県境に位置しています。約45万人の人口を誇り、県庁所在地である広島市に次ぐ広島県第二の都市として知られています。福山市の南側に広がる瀬戸内海の海沿いには、瀬戸内工業地域の一部を構成する工場群が立ち並んでおり、鉄鋼や造船などの重工業が盛んです。またこれらの重工業に関連する中小企業なども数多く存在する工業都市として名高いです。
この福山市では、産業や地域活動などのデジタル化の課題を議論して事例を共有する拠点として「びんごデジタルラボ」を設置しているほか、「びんごICT相談所」など包括的な支援体制を構築しています。福山市は新型コロナウイルスの感染拡大の影響でデジタル化やDX化が社会課題となる中で「誰もがデジタル化の恩恵を享受できる都市」というスローガンを掲げて、産業・地域・行政の3分野に関するデジタル化実行計画を策定して、デジタル化を推し進めていました。その一環として、人材や費用などの不足からデジタル化が困難になってしまいやすい中小企業を阻む壁を突破して、新たな価値を生み出すチャレンジができる環境をつくりたいとの思いから取り組みが始動しました。
続いて、具体的な取り組み内容を見ていきます。びんごデジタルラボでは、技術展示場で様々なテクノロジーとその活用事例を知ったり体験したりすることができる「びんごデジタルラボ・アカデミー」など、デジタル化成功事例の共有やデジタル化課題の議論、参加者同士のマッチングなどを目的としたイベント・セミナーの開催をしています。また、びんごICT相談所では、ICTの導入や活用について電話やWebで個別に相談対応をしています。さらに、AI・IoTなどの先端技術を活用したサービスや製品の実証実験を全国から募集・支援し、地域の課題解決や新たな都市魅力の創造につなげようと、モビリティや医療・福祉・介護、観光などの7分野の実証実験に場所の提供などの支援を行う「実証実験まるごとサポート事業」など様々な取り組みが行われています。
各事業の取り組み状況を見てみると、令和3年(2021年)の時点でびんごデジタルラボの参加企業数は164社、びんごICT相談所に寄せられた相談件数も36件となっており、実証実験まるごとサポート事業で支援した件数も平成30年(2018年)度から令和3年(2021年)度までで計15件と着実に取り組みが実を結んでいます。
まとめ
地域経済の成長と発展に向けて、地方自治体の果たす役割は欠かすことができません。そして地方自治体による地元企業のDX化支援は、新たなビジネスチャンスを開拓することにつながると共に、地域全体の魅力を高める道でもあります。今後もさらにDX化が社会的に求められていく中で、福山市のように地元中小企業のDX化を後押ししていく取り組みがますます自治体には求められていくでしょう。
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執筆者 グローカル編集部
地方創生コンサルティング、SaaS/レポートサービスを通して地域活性化を支援する、グローカル株式会社の編集部。地域活性化を目指す事例や自治体・地域企業/中小企業のDX化に向けた取り組み、国の交付金・補助金の活用例を調査・研究し、ジャーナルを執筆しています。
グローカルは、国内全体・海外に展開する地方発の事業をつくり、自立的・持続的に成長する地域経済づくりに貢献します。
出典:
<内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局HP>
<びんごデジタルラボHP:びんごデジタルラボとは>
<びんごデジタルラボHP:びんごデジタルラボ・アカデミー開催決定!>
<びんごICT相談所HP>
<福山市HP:実証実験まるごとサポート事業(随時募集)について>