top of page

デジタル田園都市国家構想交付金の活用事例―愛知県小牧市



はじめに

 現在、日本全国の地方自治体で取り組みが進められている「デジタル田園都市国家構想」。AI(人工知能)やIoT、ドローン(無人航空機)などのデジタル技術を活用して、地域それぞれの魅力を維持しながら利便性や住民サービスの向上を目指すこの構想は、地方創生を目指す自治体の取り組みの軸となっています。本ジャーナルでも力を入れて取り上げており、神奈川県逗子市の防犯カメラを使った人流把握事業石川県津幡町のAIによる運行・配車の管理を行うオンデマンドバスの取り組み岐阜県羽島市の仮想空間(メタバース)を用いた不登校児童・生徒用の居場所づくりなど、全国各地の個性的な取り組みについて紹介してきました。今回は愛知県小牧市の要介護認定業務のデジタル化事業について見ていきたいと思います。


小牧市の取り組み

 小牧市は愛知県北西部の尾張地方に立地している自治体で、人口は令和5年(2023年)9月の時点で約146,000人を有しています。全国でも指折りの工業都市である愛知県の中でも有数の工業生産額を誇り、令和2年(2020年)の製造品出荷額は愛知県内で第8位となる1兆4574億円にまで登っています。また市内には中日本高速道路(NEXCO中日本)の東名高速道路、名神高速道路、中央自動車道と名古屋高速道路の11号小牧線が通るなど、陸上交通の要衝としても栄えてきました。


 この小牧市では、今回デジタル田園都市国家構想交付金を活用して「認定調査業務のデジタル化」事業に乗り出しました。小牧市では要介護認定申請から要介護認定の審査結果を出すまでに時間を要しており、市民の要介護認定の申請から介護サービスの提供までに時間が掛かっていることが課題となっていました。小牧市では市民の利便性向上などを目的に「介護保険要介護・要支援認定」「要介護・要支援状態区分変更認定」「住所移転後の要介護・要支援認定」の申請をオンラインでできるようにするなどの取り組みを進めてきたことを「小牧市デジタルイノベーション推進計画」で明らかにしており、今回の事業は更なる市民サービスの向上を目指したものだということが伺えます。


 具体的な事業内容を見ていきます。これまで認定調査業務に時間がかかっていた主な要因として、認定調査票の作成にかかる作業時間や訪問調査を行える1日当たりの回数が2回までが限度になっていることなどが挙げられていました。今回の事業では、まず調査票作成⽀援システムを導入。このシステムは認定希望者の介助の状況などの説明にテンプレートを引用して作成が可能になるもので、搭載したタブレット端末を訪問調査の際に活用することで調査票作成の作業時間を大幅に短縮することが可能になります。またシステムに接続されたタブレット上などから調査票の作成が行えるようになるため、直行直帰での人員運用が可能となります。これまで小牧市役所と調査の実施場所との移動時間となっていた時間が削減され、1日当たりの調査可能件数を増加させることにもつながります。


 小牧市では認定調査業務のデジタル化事業に、デジタル田園都市国家構想交付金から7,912千円分の採択を受けています。令和5年6月の小牧市議会第2回定例会では、今回の事業に小牧市介護保険事業特別会計から予算を捻出することが言及されており、介護保険事業特別会計繰出金を増額するとの発言がされています。予算が付けられた「令和5年度小牧市介護保険事業特別会計補正予算(第1号)」を見てみると、介護認定調査事業として7,642千円が計上されており、その内訳は認定調査員支援システム導入委託料が5,565千円、アプリケーション使用料が512千円、業務用備品購入費が1,565千円となっています。


まとめ

 高齢化の波がとめどなく押し寄せる日本社会において、今後自治体にとって介護認定調査はより重い負担となっていくことが予測されます。小牧市のように介護認定業務にデジタル技術を活用する事例は今後数多く見られるようになっていくのではないでしょうか。


 グローカル社では、自治体の情報を横断して一括検索できるツール「G-Finder」を活用したトレンドを見逃さない調査サービス「G-Finderレポート」を提供しています。自治体に関する調査や、自治体への提案・入札参加をご検討の方はお気軽にお問い合わせください。



執筆者 グローカル編集部

地方創生コンサルティング、SaaS/レポートサービスを通して地域活性化を支援する、グローカル株式会社の編集部。地域活性化を目指す事例や自治体・地域企業/中小企業のDX化に向けた取り組み、国の交付金・補助金の活用例を調査・研究し、ジャーナルを執筆しています。

グローカルは、国内全体・海外に展開する地方発の事業をつくり、自立的・持続的に成長する地域経済づくりに貢献します。





出典:

<小牧市HP:小牧市の概要(ポケット統計)>

<小牧市HP:小牧市デジタルイノベーション推進計画>

<小牧市HP:小牧市議会 令和5年第2回定例会-06月02日-01号>

<小牧市HP:令和5年度小牧市介護保険事業特別会計補正予算(第1号)>

<内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局・内閣府地方創生推進事務局HP:デジタル田園都市国家構想交付金交付対象事業の概要愛知県>

最新記事

すべて表示

地方創生SDGs官民連携プラットフォーム(内閣府 地方創生推進事務局)の加盟団体となりました。

グローカル株式会社が、SDGsの国内実施を促進し、より一層の地方創生につなげることを目的に、広範なステークホルダーとのパートナーシップを深める官民連携の場として行われている「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム(内閣府 地方創生推進事務局)」の加盟団体となりました。...

自治体のニーズに応える営業とは ~文書調査によるニーズ理解の深化~

「うちの製品やシステムを、自治体へ売りたいのだけど、なかなか・・・」と悩んでいる企業は多いのではないでしょうか。   “やみくもなターゲティング”や“物売り営業”では、受注につながらない。 “戦略的なターゲティング”や、今、それが欲しかったんだよと思われる“ニーズを先取りす...

bottom of page