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新たな救助の手段が地域の安全を支える ドローンの消防への活用



はじめに

 近年、技術の進歩によって様々な分野でドローンの活用が進んでいます。その中でも現在ドローンの消防活動への活用が注目されています。全国の消防本部におけるドローンの導入率は約60%(令和4年(2022年)4月時点)で、小型で機動性の高い特徴から、消防隊員の安全確保や迅速な救助活動をサポートするための貴重なツールとして活躍しています。


消防におけるドローンの活用

 まず、ドローンが消防業務にどのように貢献しているのかを見ていきましょう。ドローンは、火災現場や災害現場などの危険な場所へのアクセスが容易であり、消防隊員の命を守る重要な役割を果たします。例えば、火災現場では、森林や広範囲に及ぶ火災の場合、地上からでは見えない箇所があり、延焼範囲の特定が難しく、全体像の把握が困難です。ドローンで高所から撮影することで、火災状況の確認や赤外線カメラによる火源の特定を行うことができます。消化後においても火災原因調査のため上空からの撮影や、赤外線カメラを残火の確認に活用することも可能です。これにより、消防隊員は的確な消火活動を行うための情報を得ることができ、より迅速かつ効果的な対応が可能となります。

 また、災害時の救助活動においてもドローンは大きな役割を果たします。災害現場では、倒壊した建物や土砂崩れのあった地域など、危険で容易に立ち入ることができない、あるいは地理的に到達することが難しく、目視での詳細な確認や、物資の運搬が困難な場所が存在します。こうした場所への救助活動にはドローンが活用され、カメラやセンサーを用いて被災者の位置特定や救助要員の誘導、物資の輸送などが行われます。ドローンは高い機動性を持ち、迅速かつ効率的な救助活動を支援することができます。総務省消防庁は、ドローンを使用した建物火災の状況確認や遭難者の捜索、大規模な水災や土砂災害の被害状況確認などの活用を奨励しており、「総務省消防庁無償使用制度」を通じて政令指定都市にドローンを無償貸与しています。兵庫県神戸市消防局もこの制度を利用し、令和元年(2019年)から消防用ドローンの運用を開始しました。

 兵庫県神戸市消防局では、ドローンを火災現場や事故現場、山間地での遭難者探索などに活用しています。担当者によると、「令和2年(2020年)から現在までのドローンの稼働数は26件であり、そのうち8割近くが火災現場での出動」とのことです。火災現場でのドローンの活用例としては、火災の延焼状況や残火状況の確認、上空からの火災原因調査などが挙げられます。

 令和3年(2021年)に静岡県熱海市伊豆山で発生した大規模な土石流の現場では、消防など複数の機関が捜索活動にドローンを導入しました。地上からは見えず、高空からでは距離が遠くて判別できない場所の撮影を可能にし、人の目とヘリの目の間を埋める存在として大活躍しました。

 静岡県静岡市消防局は令和元年(2019年)から、災害や山岳・水難事故、大規模火災の現場でのドローン活用を視野に入れ、職員の操縦研修を実施してきました。静岡県熱海市の災害が起きた令和3年(2021年)7月3日にドローンを被災地に持ち込み、二次災害の危険から安易に近づけない中、状況を素早く確認し、活動範囲を設定するのに役立てられました。また、静岡県からの依頼に応じて、堆積した土砂の量を推計する調査にもドローンが活用されました。総務省消防庁消防大学校消防研究センターで地形学を専門としている土志田氏よると、推計に当たってはドローン空撮画像から作成した数値標高モデルと国土地理院地図の建物枠を重ね合わせることで災害前後の地形を比較し、差分を算出することで土砂層厚を推計したとのことです。通常時からドローンを活用し、数値標高モデルを作成しておくことで、より精度の高い推計が可能になり、消防活動の優先順位を決めるうえで貢献します。災害時の活用が注目されているドローンですが、防災という観点においては通常時の活用も有効であることが示されました。

 神奈川県大和市消防本部では、大規模災害や複数火災の同時発生を想定し、全拠点に機体を配備。全隊員をパイロットとして育成することで、24時間365日いつでも飛ばせる体制づくりを行っています。 火災発生時には上空から俯瞰して火災現場を見ることで、より効果的な消火活動につながる指示出しができ、近隣の建物の延焼防止や隊員の安全確保に貢献しています。

大規模災害時に火災が複数箇所で同時発生した際には、各署所に配備したドローンで上空から火災の状況を確認し、消防本部への映像伝送も組み合わせて活用することで「火の見やぐら」の役割を担い、消防車両や隊員の最適な分配を支援します。


 消火後の火災原因調査では赤外線カメラを活用し、燻っている火種の特定を行っています。

ドローンパイロット資格を取得した消防職員数は200名(2022年4月)で、ドローンをいつでも飛ばせる体制作りのため、パイロットの育成と技能維持のための訓練を継続しています。

 神奈川県大和市消防本部 警防課の担当者に取材したところ、「神奈川県で2番目の人口密集地である神奈川県大和市では大規模火災が起こった時が一番怖い。市内の状況を本部で包括的に確認できるようになったことで、迅速な指揮判断に活用できる。」とのことでした。ドローンを導入した後、どのように運用・活用するかのモデルケースとなるのではないでしょうか。


まとめ

 地方地域では、人口減少や高齢化といった課題が顕著であり、人手不足が深刻化しています。このような状況下で、ドローンの活用は地域の消防力の向上につながります。例えば、人員不足の消防署や地域の防災組織がドローンを導入することで、限られた人員でより広範囲の監視や救助活動を行うことができます。地域全体の安全確保に寄与し、住民の安心・安全な生活を支えることができるのです。

このように、ドローンの消防への活用は、新たな救助の手段として地方の安全確保に大いに貢献するものです。今後の更なる活用が注目されます。

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執筆者 西村 東真 Toma Nishimura

地方金融機関に新卒入社し、個人顧客向けに投資信託や保険の提案など資産運用コンサルティングを実施。飲食店と消費者を結ぶリアルタイム予約プラットフォーム事業の起業に奔走したのちにプライマルにジョイン。eスポーツを活用した新サービス・事業立ち上げに向けた自治体ニーズ調査、ドローンの販売拡大に向けた営業企画、補助金調査、支援体制構築などに従事。グローカルでは特にインフラ領域の地域課題解決のため、新規事業立ち上げに向け活動。




出典:

<総務省消防庁HP:消防の動き618号 令和4年(2022年)10月>

<ドローンジャーナル:神戸市が行政の課題を払拭するドローンの利活用事例を公開令和4年(2022年)9月26日>

<あなたの静岡新聞:熱海の被災把握 ドローンが存在感 人とヘリの間、第3の“目” 令和3年(2021年)8月4日>

<経済産業省HP:自治体のドローン・自動配送ロボット等の利活用促進に向けた調査報告>

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