top of page

デジタル田園都市国家構想交付金の活用事例―兵庫県朝来市



はじめに


 岸田文雄首相の掲げているマニュフェストである「新しい資本主義」を実現するための施策として注目を集めている「デジタル田園都市国家構想」。この構想はAI(人工知能)やIoT、ドローン(無人航空機)などの最新のデジタル技術を活用して、地域それぞれの魅力や特性を損なわないようにしながら利便性や住民サービスの向上を目指すものです。安倍晋三元首相によって提唱された「地方創生」の後継的な政策で、この構想を実現するために「デジタル田園都市国家構想交付金」制度も創設され、多くの地方自治体がこの交付金を活用して地域活性化に向けた取り組みを進めています。本ジャーナルでも福井県のドローンを使った災害発生時の情報収集体制の構築長野県松本市のAIを活用したオンデマンド交通の導入愛知県名古屋市の観光客向けのデジタルマップ制作事業など、日本全国で行われている多彩な採択事業の数々を取り上げてきました。今回は兵庫県朝来市のAIドリルの導入事業について見ていきたいと思います。



朝来市の取り組み


 朝来市は兵庫県の北中部に立地している自治体で、人口は令和5年(2023年)11月の時点で約27,000人を抱えています。非常に豊かな自然と歴史的な史跡群が特徴的な自治体で、近畿地方最大級の円墳で国の史跡にも指定されている茶すり山古墳や雲海の中に浮かび上がる景観が有名で「日本のマチュピチュ」の異名でも知られている竹田城などを有しています。


 今回、この朝来市はデジタル田園都市国家構想交付金を活用して、「AIドリルの導⼊」事業に乗り出しました。朝来市議会議事録より、朝来市では令和2年(2020年)からAIドリルの機能を搭載したタブレットの導入に着手していることが明らかになっており、「AIドリルなどの学習支援アプリやバッテリー交換などの保証がセットになったパッケージで、今年度導入する中学校用のタブレット端末に設定して使用する」との発言がされています。令和4年(2022年)の朝来市議会においても、「子供たちの学力向上、そして学習支援に有効なタブレット教材としてこのAIドリル、こういうものも活用していきたいと考えている」とAIドリルの利活用拡大の意向を示しており、今回の事業はかねてからの意向を国からの交付金が利用できるタイミングで実現できたことが伺えます。また令和5年(2023年)の藤岡勇市長による施政方針演説においても、「様々な教育活動においてICT機器を効率的・効果的に利活用できるようGIGAスクール運営支援センターと連携するとともに、中学校用AIドリルを導入し、学習環境の整備・充実を図ります。」と触れられており、朝来市としても力を入れていきたい分野であることが示唆されています。


  続いて、今回の事業の詳細について見ていきたいと思います。朝来市は今回のデジタル田園都市国家構想交付金を活用した事業で、朝来市内の全4中学校の生徒663人を対象にAIドリルを導入します。市内の中学校で既に使用されているGIGAスクール⽤端末に新たなAIドリルを搭載する形で導入するとしています。このドリルは、⽣徒の習熟度に応じて⾃動構成された問題を解くことで学⼒向上を図ることができるもので、教師側も⽣徒がAIドリルを使⽤した学習時間・正答率の推移などを確認できるようなシステムとなっているため、それによって個別に学習⽀援を⾏うことが可能になります。


  朝来市は今回の事業にデジタル田園都市国家構想交付金から10,989千円分の採択を受けています。「中学校AIドリル導入業務」の指名競争入札も令和5年(2023年)9月に行われており、株式会社システムリサーチによって落札されています。今後、朝来市の事業がどのような成果を上げるのかに注目が集まります。



まとめ


 教育現場へのIT技術の導入は令和元年(2019年)に始まった「GIGAスクール構想」以降、急速に進みつつあります。岐阜県岐阜市も「岐⾩市版GIGAスクール推進事業」をデジタル田園都市国家構想交付金を活用して進めており、未だに自治体からのニーズが高い分野であることが伺えます。今後、何らかの交付金が使えるタイミングで既に導入しているシステムからの乗り換えを検討している自治体も少なくないのではないでしょうか。


 グローカル社では、自治体の情報を横断して一括検索できるツール「G-Finder」を活用したトレンドを見逃さない調査サービス「G-Finderレポート」を提供しています。自治体に関する調査や、自治体への提案・入札参加をご検討の方はお気軽にお問い合わせください。



執筆者 グローカル編集部

地方創生コンサルティング、SaaS/レポートサービスを通して地域活性化を支援する、グローカル株式会社の編集部。地域活性化を目指す事例や自治体・地域企業/中小企業のDX化に向けた取り組み、国の交付金・補助金の活用例を調査・研究し、ジャーナルを執筆しています。

グローカルは、国内全体・海外に展開する地方発の事業をつくり、自立的・持続的に成長する地域経済づくりに貢献します。






出典:

兵庫県朝来市HP:令和2年 第17回(定例)朝来市議会会議録(第5日:令和2年9月9日)

兵庫県朝来市HP:令和4年 第8回(定例)朝来市議会会議録(第2日:令和4年12月9日)

兵庫県朝来市HP:令和5年度 施政方針

兵庫県朝来市HP:開札の結果

内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局・内閣府地方創生推進事務局HP:デジタル田園都市国家構想交付金(デジタル実装タイプ)交付対象事業の概要 分野・都道府県別(令和4年度第2次補正予算)兵庫県

最新記事

すべて表示

こども家庭庁主催「もっと便利に!こども・子育てDX見本市(2024年12月20日~21日)」にG-techナビを出展します

グローカル社がご提供している官公庁専用ICT導入支援サイトの「G-techナビ(ジーテックナビ)」を、こども家庭庁が主催する「もっと便利に!こども・子育てDX見本市」に出展させて頂くことになりましたのでご案内いたします。 <開催概要>...

G-Finder(ジーファインダー)が地方創生SDGs官民連携プラットフォームにソリューションとして掲載

グローカル社がご提供している日本最大級の自治体情報データベースである地方創生SaaSの「G-Finder(ジーファインダー)」が、地方創生SDGs官民連携プラットフォーム(内閣府 地方創生推進事務局)のWebサイトにソリューションとして、2024年10月16日に掲載されまし...

地方創生SDGs官民連携プラットフォーム(内閣府 地方創生推進事務局)の加盟団体となりました。

グローカル株式会社が、SDGsの国内実施を促進し、より一層の地方創生につなげることを目的に、広範なステークホルダーとのパートナーシップを深める官民連携の場として行われている「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム(内閣府 地方創生推進事務局)」の加盟団体となりました。...

  • X
  • Facebook
  • Instagram
  • note

​​グローカル株式会社

@2024 glocal Corp.

bottom of page