top of page

デジタル田園都市国家構想交付金の活用事例―三重県鈴鹿市

はじめに


 岸田政権のマニュフェストである「新しい資本主義」を実現する施策として、掲げられている「デジタル田園都市国家構想」。この構想は、AI(人工知能)やIoT、ドローン(無人航空機)などのデジタル技術を活用して、地域ごとの魅力を維持しながら利便性や住民サービスの向上を目指すものです。「デジタル田園都市国家構想交付金」制度も設けられ、現在、全国各地の地方自治体で取り組みが進められています。本ジャーナルでも継続的に取り上げており、石川県金沢市のレーザーセンシング技術を活用したスマート林業の取り組み静岡県静岡市のメタバース(仮想現実)を利用した移住促進事業愛知県西尾市による「書かない窓口」の構築 など、全国の地方自治体のユニークな取り組みの数々を紹介してきました。今回は三重県鈴鹿市の事例について見ていきたいと思います。



鈴鹿市の取り組み


 鈴鹿市は三重県の中北部に位置する自治体で、人口は令和5年(2023年)9月の時点で四日市市、津市に次ぐ三重県内で3位となる約192,000人の人口を抱えています。太平洋戦争の戦時下である昭和17年(1942年)に旧大日本帝国海軍の海軍工廠を設置することを目的に、軍部による主導で2町12村が合併することで誕生した都市で、戦後にその広大な軍用地を工業地帯として転換したことから2次産業が盛んな工業都市となりました。またF1のレースが開催され、日本のモータースポーツの聖地となっている鈴鹿サーキットがあることで有名な自治体です。


 この鈴鹿市では、デジタル田園都市国家構想交付金を活用して「AI及びOCR技術を活⽤した市⺠サービスの向上」に乗り出しました。OCRとはOptical Character Readerの略で、画像データを光学認識装置で読み取ることで文字データに変換するシステムです。鈴鹿市では、遅くとも平成29年(2017年)にはOCRを導入していることが「一般会計・特別会計歳入歳出決算書」から読み取ることができます。また、令和4年(2022年)9月の定例会でも奥西真哉政策経営部参事(当時)が「定型で繰り返し行う事務をパソコン上のソフトウエアで自動化するRPAと、申請書など紙で提出されたデータを電子データ化できるAI-OCRの導入に取り組んでおります。このRPAやAI-OCRの利用拡大を進め、業務を効率化することで、時間外の削減や、職員でなければできない相談業務や政策の立案などへ時間を充当することで、市民サービスの向上にもつなげてまいりたいと考えております。」との発言がされており、AI-OCRの利用拡大の方向性を示してきました。


 今回の事業では、がん検診などの検診を実施している医療機関から提出される検診結果を対象にAI-OCRを導入。電磁記録化をすることで迅速かつ正確に鈴鹿市の基幹システムに登録することが可能になり、マイナポータルにいち早く反映することが実現できます。検診を受診してから閲覧可能になるまでの時間が短縮され、市民の利便性が向上することを狙っています。鈴鹿市では今回の事業にデジタル田園都市国家構想交付金から734千円分の採択を受けています。計画書には実施主体としてNTTビジネスソリューションズ株式会社の名前が記載されており、同社のソリューションを活用することが予想されます。また、令和5年(2023年)度予算にも「音声データを自動文字起こしする音声認識ソフト及び紙データを電子データ化するAI-OCRを活用し,業務の効率化を図る。」として、「業務効率化推進事業費」に2,688千円を計上しています。今後、鈴鹿市とNTTビジネスソリューションズがどのような施策を進めるかに注目が集まります。



まとめ


 鈴鹿市はOCRを数年前から導入していましたが、活用する業務の拡大に意欲を見せていたことが資料より読み取ることができます。このような意向を持っていた中で、デジタル田園都市国家構想交付金の創設が良い機会につながったことが窺えます。鈴鹿市のような、国からの補助が下りるタイミングを待っている自治体を探すことが、自治体からの案件獲得につながるのではないでしょうか。


 グローカル社では、自治体の情報を横断して一括検索できるツール「G-Finder」を活用したトレンドを見逃さない調査サービス「G-Finderレポート」を提供しています。自治体に関する調査や、自治体への提案・入札参加をご検討の方はお気軽にお問い合わせください。



執筆者 グローカル編集部

地方創生コンサルティング、SaaS/レポートサービスを通して地域活性化を支援する、グローカル株式会社の編集部。地域活性化を目指す事例や自治体・地域企業/中小企業のDX化に向けた取り組み、国の交付金・補助金の活用例を調査・研究し、ジャーナルを執筆しています。

グローカルは、国内全体・海外に展開する地方発の事業をつくり、自立的・持続的に成長する地域経済づくりに貢献します。






出典:

鈴鹿市HP:平成29年度鈴鹿市 一般会計・特別会計歳入歳出決算書

鈴鹿市HP:令和5年度当初予算 主要事業一覧

鈴鹿市HP:鈴鹿市議会 令和4年9月定例議会(第3日9月7日)

内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局・内閣府地方創生推進事務局HP:デジタル田園都市国家構想交付金交付対象事業の概要 三重県

最新記事

すべて表示

全国初の自治体窓口DXSaaS実装!和歌山県紀の川市の事例

はじめに ニュースや書籍などで目にすることも多くなってきたDX(デジタル・トランスフォーメーション)という言葉。国では令和2年(2020年)に閣議決定された「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」において、「将来の成長、競争力強化のために、新たなデジタル技術を活用して新たなビジネスモデルを創出・柔軟に改変すること」と定義しています。このDX化の波は留まることを知らず、今や官民

地方創生と群馬のブランド力向上のためのeスポーツの推進ー群馬県の取組事例

はじめに 近年、eスポーツは地域産業の活性化や高齢者福祉、地域コミュニティの活性化に繋がるコンテンツとして地方自治体から注目が集まっています。ゲームの特性上、年齢や性別、国籍、障がいの有無に関わらず、誰もが参加できるツールとして導入が進んでいます。これまで神奈川県横須賀市、東京都西東京市や荒川区の取組みを取り上げてきましたが、今回は群馬県が取り組む地方創生や群馬のブランド力向上のためにeスポーツを

デジタル田園都市国家構想交付金の活用事例―奈良県生駒市Pt.2

はじめに 現在、日本全国の地方自治体によって取り組みが進められている「デジタル田園都市国家構想」。この構想はAI(人工知能)やIoT、ドローン(無人航空機)などの最新のデジタル技術を活用して、地域それぞれの魅力や特性を損なわないようにしながら利便性や住民サービスの向上を目指すものです。この構想を実現するため「デジタル田園都市国家構想交付金」制度も創設され、交付金を活用して地域活性化や地方創生を図る

bottom of page