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デジタル田園都市国家構想交付金の活用事例―石川県金沢市

はじめに

 近年、日本はデジタル化やデジタルトランスフォーメーション(DX)が進み、新たな時代が始まりつつあります。その中で注目を集めるのが、「デジタル田園都市国家構想」です。岸田内閣の目玉政策の1つで、岸田内閣の目指す「新しい資本主義」の根本を担う政策とされています。この構想はデジタル技術の活用で各地域の個性を活かしながら、地方の社会課題解決や地域の魅力を向上して、地方創生を目指すものです。「デジタル田園都市国家構想交付金」という交付金も創設され、全国の自治体の事業に交付金が下りています。本ジャーナルでも、神奈川県箱根町神奈川県逗子市などの取り組みについて紹介してきました。今回は石川県金沢市の取り組みについて見ていきたいと思います。


金沢市の取り組み

 金沢市は石川県のほぼ中央に位置し、県内最大の約446,000人の人口を抱える石川県の県庁所在地です。加賀前田藩のお膝元として知られ、金沢城の周辺に広がる城下町や茶屋街は今も風情を残した姿を保っています。また国の特別名勝で、日本三名園の1つにも数えられる「兼六園」など、歴史的な建造物などが残る街並みが有名です。また本ジャーナルでも取り上げたデジタル人材の育成<リンク>など、行政が積極的にデジタル化を進めているところも特徴です。


 金沢市ではデジタル田園都市国家構想交付金を活用して、様々な事業に取り組んでいます。その中でも特徴的なものの1つが、今回紹介する「⾦沢市スマート林業推進事業」です。スマート林業とはICTやロボットなどの最新のデジタル技術を活用して、森林の管理や業務の省力化・効率化などを目指すことです。金沢市では、このスマート林業を積極的に推し進めています。かねてからドローンを活用したスマート林業の実践をしており、令和3年(2021年)には森林環境譲与税を活用してドローンによって海岸林の資源量や松くい虫被害状況の調査を実施するなどの実績がありました。デジタルの効果を波及させるための行動計画「金沢市DXアクションプラン」内でも「レーザーセンシング技術を活用したスマート林業の推進」と方向性が明記されています。


 今回、金沢市がデジタル田園都市国家構想交付金を活用して取り組むのが航空レーザを使った測定事業です。この事業では、まず金沢市内全域の森林を航空レーザで計測します。測定したデータを活用して森林情報や森林資源を把握することができます。またこれらの情報を県森林クラウドに掲載することで、林業事業者が森林施業などに活⽤することが可能になり、経済林・環境林のゾーニングや林業事業者による⺠有林の施業設計などにも役立てることができます。


 金沢市ではデジタル田園都市国家構想交付金に77,000千円分の採択を受けています。また金沢市では令和5年(2023年)度予算に「スマート林業推進事業費」として森林環境譲与税活用事業費から59,000千円、市営造林費から97,500千円が計上されています。


まとめ

 デジタル田園都市国家構想は、岸田政権の目玉政策として今後も注目を集めることが予測されます。地域の魅力をブラッシュアップして新たな価値を創造し、地方創生や地域の活性化を目指す取り組みは日本社会の未来を切り拓くことが期待されています。新たに交付金の採択が行われる際には、金沢市のようなデジタル技術を駆使して地場産業の効率化を目指す取り組みが現れるでしょう。


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出典:

<金沢市HP:金沢市デジタル戦略2.0>

<金沢市HP:金沢市DXアクションプラン>

<金沢市HP:令和3年度森林環境譲与税の使途について金沢市HP:金沢市予算概要(当初予算及び補正予算)令和5年度(2023年度)当初予算経済、農林水産部門>

<内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局・内閣府地方創生推進事務局HP:デジタル田園都市国家構想交付金交付対象事業の概要 石川県>

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