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LINEアカウント活用で市民サービス向上!愛知県西尾市の事例

更新日:11月17日

はじめに

 近年、急速なデジタル技術の進化が私たちの生活や社会のあり方を大きく変化させています。このデジタルトランスフォーメーション(DX)の波は、行政や地方自治体の業務にも大きな影響を及ぼしています。全国の地方自治体でフロントオフィス、バックオフィスを問わず、光学文字認識技術であるOCRやシナリオに基づいて動作するロボットにより業務を自動化するRobotic Process Automation(RPA)などを活用した、業務の効率化が行われています。本ジャーナルでも、新潟県長岡市東京都江戸川区など、全国のDX事例について紹介してきました。今回はソーシャルネットワークサービス(SNS)である「LINE」を活用した、愛知県西尾市の取り組みについてフォーカスしていきたいと思います。


西尾市の取り組み

 西尾市は愛知県の西三河地方に含まれる市で、愛知県内では9番目となる人口約167,000人を抱えています。西尾市内では鎌倉時代に足利義氏によって築かれたとされる「西条城」が、「西尾城」と改称された江戸時代に城下町がつくられました。この城下町が生み出す景観と「西尾の抹茶」の名で知られる西尾茶が特産品となっていることから、「三河の小京都」とも呼ばれています。


 この西尾市では、市のDX化の方針を示す「⻄尾市DX基本⽅針」、DX化の具体的な実行計画である「西尾市DXアクションプラン」をそれぞれ策定し、DX化を推進しています。令和5年(2023年)に改定された「西尾市DXアクションプラン2023→2025」でもLINEを活用した事業として「市公式ウェブサイト等の『手続きナビ』の提供」、「窓口混雑状況の見える化システムの運用」などが明記されており、LINE活用に対する西尾市の姿勢が伺えます。


 続いて、具体的な取り組みを見ていきたいと思います。西尾市ではLINEを連携させたオンライン申請で、住民票や所得・課税証明書などの発行をすることができる体制を構築しています。この体制を構築した背景には既存システムの煩雑さにあります。それまで使用していた電子申請・届出システムを利用したオンライン申請はアカウント作成が必要で、単発的な申請のためにアカウント登録する必要があることや申請の処理状況がメールで送られてくることなど、利用者目線では面倒なシステムとなっており、利用者数が伸び悩んでいました。


 そこで西尾市は、西尾市の公式LINEアカウントからオンライン申請フォームへアクセスできるような導線を構築。スマートフォンを使ってマイナンバーカードで本人確認を行い、クレジットカードやPayPayなどの決済サービスを利用して手数料を払うと、手数料の支払いからおよそ1週間で依頼した証明書などが届くようになりました。LINE連携以前の平成23年(2011年)4月から令和4年(2020年)1月までで、オンラインを活用した申請件数は29件でしたが、LINE連携開始後の令和4年(2022年)2月から5月までの4か月間の申請が22件と、たった4か月で長い年月で積み上げた件数に並びかけるほど利用されました。


 令和5年(2023年)3月に開かれた、西尾市議会「令和5年予算決算委員会企画総務分科会」では西尾市LINE公式アカウントの登録者数が10万人を突破したことや、マイナンバーカードの交付率が2月末時点で67.9%となったことが報告されており、利用が広がる土壌が出来つつあります。さらに令和5年(2023年)度予算にLINEを活用した浸水情報通知システムを導入する「河川防災情報整備事業」に19,800千円、「LINEを活用した道路・公園等の損傷・不具合の通報システム」に2,541千円を計上しており、さらにLINEを活用したサービスが拡大する予定です。


まとめ

 地方自治体におけるDX化は、地域の課題解決や住民の利便性向上を目指す重要な取り組みです。デジタル技術の進化を活かし、効率的な行政サービスや新たな地域価値の創出を追求することで、地域活性化や地方創生の一助となるでしょう。また既に何らかのシステムを導入している自治体でも、西尾市の事例のように、より利用されるサービスへと転換をしていく視点も必要になるでしょう。


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出典:

<西尾市HP:スマート申請(各種証明書のオンライン申請)>

<西尾市HP:西尾市DXアクションプラン>

<西尾市HP:西尾市議会議事録2023-03-13:令和5年予算決算委員会企画総務分科会本文>

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