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ドローンを活用した作付け確認の効率化 佐賀県白石町の事例

更新日:10月6日

はじめに

 近年、技術の進化によりドローン(無人航空機)の利用が広がり、その活用範囲は多岐にわたっています。特に、日本の地方自治体でもドローンの活用が進みつつあり、さまざまな分野で効果的な活動が行われています。農作物への農薬散布や災害対策としての活用など、ジャンルを問わず多くの場面で活躍できる、地方創生につながるツールとして自治体から注目が集まっています。本ジャーナルでも、宮城県仙台市の災害対策分野での活用神奈川県横浜市の下水道点検に用いる事例などを紹介してきました。今回は佐賀県白石町での取り組みについて見ていきます。


白石町の取り組み

 白石町は佐賀県の南西部に位置する自治体で、平成17年(2005年)に旧白石町、福富町、有明町の3町が合併して誕生しました。町内には広大な白石平野が広がり、南東には有明海を臨む自然豊かな町です。この白石平野は粘質土壌が特徴で、米・麦、野菜、施設園芸などの農業に非常に適した土地となっており、一次産業が盛んな地域です。佐賀県の名産品でイチゴの「さがほのか」や粘土質の土壌が栽培に適しているとされるレンコン、生産量全国2位の佐賀県で県内生産量の7割近くを生産している玉ねぎなど、多くの農産物を生産しています。


 この農業の盛んな白石町では、二毛作などで栽培する麦の作付面積を確認する作業が非常に負担になっていました。麦の作付面積に応じて交付金を交付する必要があるため、毎年2~3月は白石町職員が現地のほ場まで訪れ、農家から提出された申請とほ場への作付けが合致しているかの確認を行い、その後現地で確認した内容やデータの整理をして農家への交付金の支給を行っていました。ほ場の現地確認に多くの時間を要していたため交付金の支払いに遅れが生じるなど、課題となっていました。また制度改正によって、交付金の交付対象となる農作物の種類が増加したことで確認が必要となるほ場の数が増えてしまい、ますます給付するまでの時間がかかってしまうことへの懸念も上がっていました。


 そこで白石町が開始したのが、ドローンを活用したほ場の確認作業です。新しいシステムでは、まずドローン事業者である株式会社オプティムが町内の農地の写真を撮影。その後、撮影した写真データと農地のデータを管理システムにセットすると、町職員がパソコンの画面上でドローンが撮影した画像と農地データを見比べながら、作付状況を確認出来るようになりました。これにより、従来よりも30日程度短縮することができるようになりました。従来は町内の作付けされたほ場の確認に20日間程度、その後のデータの整理などで14日間ほどがかかってしまう場合もありました。ドローンを活用してからは、写真撮影に3日間程度で、パソコンでの作付け状況の確認作業までを合計すると概ね7日間程度で作業が完了できるようになり、農家への交付金などの早期支払いに向けて効果がありました。


まとめ

 今後は、ドローン技術の進化や制度の整備に伴い、さらなる活用が期待されます。地方自治体は、これらの技術を適切に活用しつつ、地域の発展と市民の安全を両立させるための方策を模索していくことでしょう。白石町のようにドローンを活用することで、市民サービスを向上させる自治体も現れています。今後、市民サービス向上を狙い、ドローンを活用する自治体はさらに増加することが考えられるでしょう。


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出典:

<内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局:ドローンを活用した作付け確認の取り組み>

<白石町HP:広報白石NO.172>

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